交わした約束を夫に一方的に破られた
千穂さんが最初に不信感を持ったきっかけはタバコでした。もともと千穂さんは煙を吸うと咳が出たり、吐き気をもよおすほどタバコを受けつけないタイプだったのですが、千穂さんが心配したのは自分より娘さんのこと。副流煙による健康への影響は大人より子どものほうが大きいので、千穂さんは結婚するにあたり「タバコをやめてほしい」と頼んだそう。そして夫も「ああ、わかったよ」と承諾してくれたのですが……。
夫と一緒に暮らし始めて2か月目。千穂さんが帰宅すると部屋中にタバコの煙が充満していたそう。もちろん千穂さんは「禁煙するって約束だったでしょ!」と詰め寄ったのですが、夫は千穂さんの忠告を聞かず。それ以降も隠れてタバコを吸っており、千穂さんが妊娠しても完全に喫煙をやめる気配はありませんでした。結局、「お前らの前で吸わなきゃいいんだろ!」とすごむ夫に押し切られる形で、禁煙の約束は半ば「なかったこと」に。一度交わした約束を一方的に破られた格好で、千穂さんが夫からナメられているのは明らかでした。
「上から目線で言うな!」「馬鹿にしているだろ!」「何様のつもりだ!」
夫は途中から注意する千穂さんのほうが悪いと話をすり替えるようになり、それから千穂さんは強く言いにくくなったのです。
夫から目の敵にされた長女は萎縮するように
そして長男の誕生をきっかけに夫の異常性はエスカレート。目の敵にされたのは娘さんです。夫にとって娘さんは養子、息子さんは実子ですが、ひとつの家庭のなかで二人を育てるのだから、養子と実子は平等に扱わなければならないでしょう。結婚の条件の中に「娘を自分の子として育てる」ことが含まれていたのだからなおさらです。
とはいえ、夫が自分と容姿が似ても似つかない娘さんと、そっくりな息子さんに対して同じ愛情を持てるかといえば、気持ち的には難しい面があるのも事実です。夫は愛情の大小を心の中にしまっておけばよかったのですが、露骨に態度として表したのです。
例えば、娘さんが調味料を使おうとすると「勝手に使うな!」と叱責したり、夫がトイレに行きたいタイミングで娘さんが先に入っていると、舌打ちをしてせかしたりしたそう。そのたびに娘さんは萎縮し、夫の顔色をうかがい、おっかなびっくり接するように。娘さんはただでさえ養父である夫とどう接していいか迷っているのに、夫のせいで困惑の色が濃くなったのです。
さらに、年賀状に息子さんのみが写った写真を使うなど、養子と実子に差をつけ始めたのです。あげくの果てには娘さんが習っていたエレクトーンのコンサート料を払わないと言い出し、教室をやめざるをえなくなったそう。エレクトーンにかかる費用はレッスンの月謝が13500円、コンサート料は22000円と決して高額ではありませんが、夫は血のつながらない娘さんのために使うお金はギリギリまで切り詰めたかったのでしょう。ゴミ箱に捨てられた楽譜を見て、娘さんがショックを受けたのは言うまでもありません。
千穂さんは結婚をきっかけに仕事を辞めており、夫に対して金銭的に依存していたため、言いなりになるしかありませんでした。夫が「出さない!」と言えば、それまでです。
お金以外の面でも夫の協力は乏しかったと言います。例えば、千穂さんが夫に対して「病院に付き添ってほしい」と頼んでも「何様のつもりだ!」と暴言を吐くばかり。病院の検査や受診、医師への相談は千穂さん任せだったそうです。しかも千穂さんが娘さんを連れて病院に行っている間、家事全般(食事・洗濯・掃除)は一切、やってくれなかったのです。