「頑張ってきた自分を誇りに思ってほしい」
不妊治療に足を踏み入れた人の多くが頭を悩ませるのは、そのやめどきだ。お金や時間、労力を注ぐものの子どもはなかなかできず、年齢は上がり、妊娠率は下がっていく──。
「金銭的なリミットがあれば、泣く泣くでもやめるしかない。難しいのは、お金がなんとかなってしまう方。最近は金融機関で簡単にローンを組めることもあり、悩む方が増えています」
こう話すのは不妊治療経験者の心のサポートをする一般社団法人『MoLive』(モリーヴ)代表の永森咲希さんだ。なぜ不妊治療はやめづらくなるのか?
治療継続を進め続けるクリニックも
「体外受精などは1回に何十万円もかかります。治療を重ねれば重ねるほど多くの時間やお金を費やし、その費やしたものを取り戻そうという本能が働き、やめられなくなるところがあるように思います」(永森さん、以下同)
たとえはよくないが、勝つまで続けてしまうギャンブルと似たところがある。
医療の問題もある。女性は高齢になるほど妊娠しにくくなるが、それでも治療継続をすすめてくるクリニックも中にはあるという。
「先日、相談に来られたのは40歳のときから12年間治療をされた方。流産を重ね、50歳が近づいたころ、ドクターに“もうやめたほうがいいですか”と聞くと、“可能性はまだあるのに”などと言われやめられず、その後、ひどい更年期とうつに見舞われ、最終的には仕事を辞めざるをえない状態になったと泣かれていました。そんなふうに病院に治療を引き延ばされる話もときどき聞きます」
自分はやめたいと思っても、義父母からプレッシャーを受けるケースもある。
「義母が家に来ると最初にトイレに入り生理用品をチェックし、生理用品が減っていると“またきたの?”と嫌みを言われるそう。また、夫のカバンに離婚届とお見合い写真を見つけて問いただしたところ、義母のすすめだったことがわかったという人もいます」