22年ぶりに“寅さん”が

 邦画も負けておらず、あの寅さんが帰ってくる。1969年の第1作『男はつらいよ』公開から50周年となる今年、『男はつらいよ お帰り 寅さん』として22年ぶりにスクリーンに登場する。

 この『男はつらいよ お帰り 寅さん』では、寅さんの甥(おい)である満男(吉岡秀隆)が主人公となっている。幼いころから寅さんに大きな影響を受けてきた満男が、初恋の女性と再会することをきっかけにストーリーが展開していく。

 4Kデジタル修復された過去のシリーズ作品の映像がふんだんに使用され、往年の寅さんの姿や、おいちゃん(※)やおばちゃん(三崎千恵子さん)、タコ社長(太宰久雄さん)に御前様(笠智衆さん)といった懐かしい出演者たち、そして浅丘ルリ子や吉永小百合といった、マドンナを演じた錚々(そうそう)たる女優たちの若き日の姿を見ることができる。(※第1〜8作までを森川信さん、第9〜13作を松村達雄さん、第14〜49作を下條正巳さんが演じた)

 また、1989年の『男はつらいよ ぼくの伯父さん』から5作品にわたりシリーズに登場してきた後藤久美子がスクリーンに復帰している点でも、大きな注目を浴びている。

 F1ドライバーのジャン・アレジとの交際・結婚を機に、フランスやスイスなど海外を拠点に暮らしている彼女は、女優としての活動をほとんどしていない。だが、山田洋次監督から熱烈な手紙をもらい、『男はつらいよ』50周年記念作品である本作でスクリーン復帰を決意したという。

 劇中でもヨーロッパに渡り国際結婚をしているという実生活に即した設定で、国民的美少女から国際的美女へ成長した“貫禄の美女ぶり”を見せている。

あなたは何を見る?

 これら『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』、『男はつらいよ お帰り 寅さん』以外にも、この年末年始には多くの人気作、話題作が公開される。

 “映画”は気軽に体験できる娯楽のひとつとして、長年にわたり人々を楽しませてきた。特に日本の“正月映画”は、年始めに家族や大切な人と映画館に訪れ、暗闇の中で同じスクリーンを見つめて、その年の初笑いや初感動を共有する。お正月に見る映画は、やはり大人も子どもも笑って泣いて楽しめる、娯楽作がふさわしい。

 今となってはあまり使われない“正月映画”という言葉。時間に余裕のある年末年始は、ゆっくりと過ごしたいという人は多いだろう。正月映画を見て、誰かと笑いや涙を共有するという体験が、あなたのこれからの一年を、ほんの少し豊かなものにしてくれるはずだ。

PROFILE
松村 知恵美●まつむら ちえみ●家と映画館(試写室)と取材先と酒場を往復する毎日を送る映画ライター、WEBディレクター。’01年から約8年、映画情報サイトの編集者を経て、’09年に独立し、フリーランスに。ライターとしての仕事のほか、Webディレクションなども行う。