敗者復活からの下剋上
大ウケのかまいたちの後はやりにくいだろう、という雰囲気の中、今回、笑神籤を引く役割を担(にな)ったラグビー日本代表が敗者復活の札を引いた。とたんに、空気は一変する。
「敗者復活からあがってくるのは誰か?」
ということに、注目が移った。日が落ちさらに冷え込む六本木アリーナ。決勝会場に入れなかったファンたちが大勢つめかけ、結果を待っている。5位~16位まで発表され、上位4組に、アインシュタイン、和牛、ミキ、四千頭身が残った。
司会の今田が決勝に復活するたった1組を読み上げる。
「4547番、和牛!」
声が響いた瞬間に、アリーナでも決勝スタジオでも歓声が上がった。視聴者投票650095票。2位のミキに20万票近くも差をつけた、文句なしの勝ち上がり。和牛が今年はどんな漫才をやってくれるのか。「待ってました!」そんな空気ができあがった。
敗者となった仲間たちが「行ってこい」「優勝しろよ」と拍手で和牛を送り出し、その声援に背中を押されながら、アリーナから決勝のスタジオに移動。CM明けには即、登場となった。
和牛は水田信二と川西賢志郎が2006年に結成したコンビ。M-1が復活した2015年に決勝進出し、「実力はあるが地味」と言われ続けた彼らがこれをきっかけに注目されるようになる。2016年から3年連続で最終決戦に進出し、抜群の漫才を見せながら、ずっと2位というM-1史上にない成績を続けている。
大きな拍手がおこる中、和牛がステージに登場した。
挨拶後の2度目の拍手に「ありがとうございます」と応える余裕まであり、なめらかに漫才に突入。
不動産屋と部屋探しするネタ。役としてボケて、役としてつっこむという、和牛が得意とするコント漫才。シーンがコロコロと変わるのに、イメージをキチッと構築。後半はツッコミが、狂気に転じていく新しい展開もあった。キャッチーな言葉やポーズも飛び出て、観客を沸かせていく。
結果、652点。
審査員のナイツ・塙宣之がつぶやいた。
「和牛とかまいたちが凄すぎる」
昨年、3位通過の点数は648点。それを上まわる点数をたたき出した。かまいたち、和牛の最終ラウンド進出は間違いないかと思われたが──。