さらには、それだけお金をかけて建設した競技施設などの箱物が、負の遺産になるのではないかとも懸念されている。事実、1998年に開催された長野冬季五輪では、開催費用の利息を含めた借入金、約694億円の返済に20年かかり、ボブスレー・リュージュ競技の会場施設『スパイラル』を保有する長野市が、維持管理や改修に巨額の費用がかかることを理由に、2018年度以降の競技使用をやめると発表したほどだ。
そんな中、お披露目されたばかりで注目を集める新国立競技場は、「階段や席が狭い」「ゲートで応援席が分断される」など不満の嵐……。
「日本スポーツ協会やJOCは、新国立競技場を使えそうな各競技団体と協議して、どういうレイアウトで五輪後に運用していくかということを話し合わずに、建設を進めてきた。サッカー関係者から見れば、国を挙げてワールドカップ優勝を目指しているのに、メインスタジアムが“陸上のトラックつき”になってしまっている(苦笑)。足並みがそろっていないから不満だらけの競技場が誕生してしまう。しかも、その維持費は、都民が負担していくことになる」
“五輪終了”の反動で財布のひもは……
アテネ、リオデジャネイロを筆頭に、巨大都市で開催したとしても膨れ上がった五輪予算に圧迫され、その後財政難に陥る自治体は少なくない。そこでワラにもすがりたくなるのは、五輪開催による経済効果だ。
東京都によると、大会招致が決まった'13年から大会10年後の'30年までの18年間で、30兆円を超える効果があると試算しているが――。
「フタを開けてみなければわからない」としながらも、「直近の3四半期の実質GDP成長率は、前期比年率+2%前後を維持しています。数字の上では、効果が出ているといえます」と語るのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さん。
「今年上半期に関しては、6月末まで行われるキャッシュレス・ポイント還元事業に伴う形で、五輪観戦に備えたテレビの買い替えなどの駆け込み需要、さらには外国人観光客(インバウンド)増加による外需が期待できます」
一方で、下半期を過ぎると内需は厳しくなると予想する。
「家計においては、昨年と比べると国全体でも1兆円以上の増税という状況です。財布のひもは自ずと固くなるでしょう。
また、4月から中小企業でも残業規制が導入され、大企業に同一労働同一賃金制(職務内容が同じであれば、従業員に同じ額の賃金を支う制度)が導入されることで、中高年正社員の給料は下がる可能性もある。家計も企業もマイナス傾向になるため、そもそもオリンピックというイベントがなければ上半期も期待できるものではなかった」