岸泰史さん(仮名)は30代後半。同じ境遇の人たちと知り合いたくて参加したと話す。
「同世代でないと、ロスジェネの問題はなかなかわかってもらえない。上からも下からも自己責任と言われるので」
岸さんは「まあまあ大手の正社員」という現在に至るまで、4度の転職をしてきた。
「いずれも正社員でしたが、サービス残業は当たり前、パワハラも日常茶飯事という環境でした」(岸さん)
激務がたたり、心を病んでしまった人もいる。神奈川県のサトーさん(仮名=39)は元公務員。総務省の地方局に勤めていたが、本省へ異動となり、多いときで月200時間超の残業をこなすように。
「1年ほど働き、うつ病に。仕事量が多く、心身を壊す人、自殺者も出ました」
1度は復職したものの、働き方や仕事に疑問を抱き、サトーさんは職場を去った。
「氷河期世代の窮状は、正社員の採用を抑制してきた企業と、問題を放置し続けた国による人災だと思っています。彼らは責任をとるべきです」
非正規の就労相談を非正規が受ける状態
『NIRA総合研究開発機構』は氷河期世代が高齢になると、生活保護費に20兆円の追加支出が必要と指摘。こうした状況を受けて政府も遅まきながら対策に動き出した。今後3年で、30代半ばから40代半ばの正規雇用を30万人増やす目標を掲げている。
これに氷河期ネットのメンバー・本間陽子さん(仮名=47)は、懸念を隠さない。
「ハローワークに専門窓口を設置するとしていますが、氷河期世代に特化した支援ができるのか疑問です。というのも、手の空いた職員が回され、氷河期担当の名札をつけるだけ。専門性を持つ支援者が対応するとは限らないのです」
本間さんは関東地方のハローワークで相談員を務める非正規公務員。就職氷河期の荒波にもまれてきた当事者だ。
「氷河期世代に特化した求人もぼちぼち出始めていますが、介護やサービス業など、人手不足のところへそのまま当てはめているような印象です」
氷河期世代に非正規が多い背景には、国と財界が規制緩和に走り、労働者派遣法の改正を重ねるなどして、低賃金で解雇しやすい非正規を増やし続けた影響もある。
「公務員も例外ではなく、ハローワークで働く職員の6割が非正規。正社員になりたい非正規の相談を、雇い止めに怯える非正規の私が受けるという、ブラックジョークみたいな状態です」(本間さん)