それができていない日本には、日本特有の問題が存在するということだろうか。玉城知事は、一歩踏み込んで解説する。

「日米合同委員会がありますね。そこでの議論の内容は公表もされないし、議事録さえ取る義務がないことになっている。国の重大な事業、国民の安全に関わることを決めるのに知らせようとしない、非民主主義的なやり方でいいのでしょうか。私は全国のみなさんに問いたいのです

全国キャラバンにかける思い

 翁長雄志前知事が亡くなる直前の最後の記者会見で語った言葉が思い起こされる。

「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」

 翁長前知事は、そのような国にしてしまった日本人全体が沖縄に集中的に犠牲を強いている現状を嘆いていた。玉城知事も、その思いを受け止めて新知事に就任している。

 全国の人々に沖縄の現状をもっと知ってほしい、民主主義の尊厳について一緒に考えてもらいたい、わがこととして基地問題を考えてもらいたい。玉城知事のその思いは強い。6月には全国キャラバンを再開したいと考えている。

「大都市に限らず、例えば議会が『辺野古反対決議』を採択したような地方都市に行って、さまざまな立場の人と意見交換をしたいですね。日本国民のみならず、アメリカのみなさんや他国・他地域のみなさんに対しても、世界共通の価値観とする民主主義の尊厳を守っていくため、沖縄から積極的に発信を続けていきたいと思います」

 厳しい状況に身を引き締めつつも「対話は可能」と、玉城知事はあくまでポジティブに言い切る。沖縄で起きている問題を沖縄だけに押しつけたままでいいのか。その訴えに今こそ全国の人々が向き合うときではないだろうか。

(取材・文/渡瀬夏彦)


渡瀬夏彦 ◎沖縄移住14年目のノンフィクションライター。基地問題からスポーツ、芸術・芸能まで多岐にわたり取材。講談社ノンフィクション賞を受賞した『銀の夢』ほか、著書多数