Q:夫は2回取れるって本当?

 本当。育休は、通常1回しか取れないが、男性には特例がある。

「妻の産後8週間以内に夫が育休を1回取っていれば、子どもが1歳になるまでの間にもう1回、育休を取ることができます」

 塚越さんも、第2子が生まれたときに、この制度を利用したという。

「1回目は出産直後に。妻にとって心身ともに大変な時期ですから。そして2回目は、専業主婦だった妻が働き始めるというので、その就職活動の時期に。私が子どもを見ている間に、妻は面接用のスーツを買いに行ったり、エントリーシートを書いたりすることができました」

Q:妻が専業主婦なら夫は育休を取らなくてもいい?

「共働きだろうが専業主婦だろうが、妻の産後ケアは必要。出産による肉体的疲労だけの話ではありません」

 左のグラフのとおり、妊婦の女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)は、出産に向けて通常の約100倍といわれるほど急増する。そして、出産直後にはほぼゼロへと急降下。

「ホルモンバランスが崩れ、精神的に不安定に。ひどい場合は、“産後うつ”になります」

 産後うつになる人は約1割。重症ケースでは、自ら命を絶ってしまうことも……。

「心身不安定のピークは産後2週間ですが、緩やかに2~3か月続きます」

 特に1か月健診で“母子ともに健康”のお墨つきをもらうと、実家のサポートがサーッと引くケースが多い。安心した妻が家事育児をひとりで頑張りすぎて、心身のバランスを崩すことも少なくない。

「ゆえに、夫は少なくとも産後2週間に育休を。できれば産後8週間は夫がそばにいて妻のサポートに専念してほしい。それが難しい場合でも、産後3か月までは定時で帰る、常に夫婦で連絡がとれるようにしておくなどが必要。くれぐれも出産後3か月間を甘くみないでもらいたいです」

Q:里帰り出産だから夫が育休を取る必要なし?

 里帰り出産で、妻の実家のサポートが受けられる場合、夫の出る幕はないと思いがちだが、

「義父母に手伝ってもらえるのはありがたいことですが、子育ては夫婦2人で一緒にスタートを切るのが理想なんです。妻だって1人目は子育ての素人。その素人の状態を夫婦2人で経験すれば、同じように子育てできるようになるのに……」

 里帰り出産は、いわば妻の泊まり込み研修のようなものだという。

「1か月後あたりに、子育てスキルをぐっと上げた妻が家に帰ると、ド素人の夫が待っているわけです。夫が育児に手を出すと、イライラが止まらない。そして口出し、手出し、ダメ出し。夫は育児参画をあきらめ、夫婦ともに“育児は妻がやるもの”という構図ができあがる。ワンオペまっしぐらです」

 これによってイクメンの卵がどれほど失われてきたか、と塚越さんは嘆く。

「脳科学的には、母性は女性に生まれつき備わっているものではなく、一定期間の子育て経験によって芽生えるもの。同じ経験をすれば男性にも芽生えます。里帰り出産によって夫婦育児スキルに格差ができた場合でも、妻は夫の育児をやさしく見守り、やらせてみる。そうやって、夫も“子育て脳”に切り替われば、その後もずっと積極的に育児に関わるようになりますよ」