生活保護一時扶助申請のアウトとセーフの境界線とは?
生活保護は、憲法25条の「国民に健康で文化的な最低限度の生活」が保障されるべきという考え方に基づいた制度だ。いつ自分の家庭が経済的なやり繰りに困るとも限らない。そんなときは、高い金利の借金を重ねるより、まずは福祉事務所に状況を相談してみよう。申請の手続きや生活保護制度の実態など(気になる生活保護制度Q&A)について、厚生労働省の担当者に話を聞いた。
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そもそも、生活保護を申請する場合、どこへ申請すればいいのか。
「福祉事務所は基本的には都道府県にありますが、市・町・村でも設置している地域はあります。全国では1250か所ほど設置しています」
申請の手順は複雑ではないのか。
「福祉事務所に来ていただいて、保護の申請の意思を表示していただければ大丈夫です。原則14日以内に保護か却下を決定します。結果は決定通知書で本人に通達されます」
申請する場合、何か必要なものはあるか。
「特に必要ありません。福祉事務所に申請用紙などありますので、そこに名前などを記入していただきます。字が書けない方に対しては職員が代筆して申請を受け付けることもやっております」
支給される費用は、生活扶助(食費・光熱費など)、住宅扶助(家賃)、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助(就労のための技能取得費)、葬祭扶助の8種類ある。
生活扶助費と住宅扶助費は、住んでいる場所が都市部か地方か、世帯の人数、それぞれの年齢などによって基準額に差があり、また受給を始めた年によって金額に大きな差が出ないように調整され、それぞれの支給額が決まる。加えて母子家庭や障害者への加算や冬季における光熱費等の増加需要に対応する冬季加算などもある。
こうしてその家庭の最低生活費が計算されるわけだが、働くなどして収入がある場合は、その収入額を差し引いた金額が支給される。働いたり、なにか収入があっても、生活が苦しければ保護を受けられる可能性はあるので、福祉事務所に相談してみるといい。
前出の山上さんは、生活保護申請時に“水際作戦”を経験したというが、
「生活保護の申請があったら絶対に受け付けないといけません。書類は決定するまでの間に作っていただければ大丈夫です。申請権を侵害してはいけないとなっています」
そして、裁判で争っている壊れたストーブの買い替え費用について、
「決められた要件に該当しないと、一時扶助として支給されません。日常生活に必要なものは、支給された保護費の中でやり繰りして購入していただくのが、生活保護制度の大前提です。それが難しく、緊急の場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金の貸付制度を紹介しています。低所得者に無利子、連帯保証人不要での貸し付け制度もあります」
ルールや制度はただ守るためだけにあるのだろうか。山上さんのように死の恐怖と隣り合わせになる制度は変えていかなければならないはず。生活保護とは“生活に困ったときの最後の砦(とりで)”なのだから。人命よりもルールが優先されてはならない。