50代のおじさんが10代の若者より高身長

 実は体力低下に加え、もうひとつ気になるデータがある。子どもたちの身長が伸び止まりしているというのだ。

「厚労省の『国民健康・栄養調査』の推移を見ると、’17年に18~19歳男性の平均身長は170センチを割っています。対して、50代男性の平均身長は170センチを超えている。微差ではありますが、10代の若者の平均身長を、初めて50代のおじさんが追い抜いてしまった」

 そう衝撃的な結果を教えるのは、独身研究家で『結婚滅亡』などの著書のある荒川和久さん。かつて結婚の条件と言われた三高(高身長・高学歴・高収入)について調べていた際に、身長が伸びていないことに気がついたと話す。

「’90年代から日本人男性の身長は伸び止まりしていて、昨今は低身長化の傾向にあります。日本人の平均身長は、明治時代からの栄養・衛生状態の改善により、100年間で約15cm伸びました。特に、高度経済成長期に生まれた人は、身長がグンと伸びた世代。その世代がおじさんになったことで、いよいよ今の10代を上回る形になった」(荒川さん)

 たしかに、電車で見かける昨今の中高生って昔に比べると小さく見えるような……。

厚労省「平成29年国民健康・栄養調査」より荒川和久作成
厚労省「平成29年国民健康・栄養調査」より荒川和久作成
【図版】令和元年調査 子どもたちの体力の“今”、年代別身長の変遷

伸びる人は伸び、伸びない人は伸びない“二極化”

 低身長化の原因は、栄養不足・運動不足などが考えられるが、国立成育医療研究センターの見解では、出生時2500グラム以下で生まれた子を意味する『低出生体重児』の増加もあるのではないか、とも。

「興味深いのは、170センチを境に、高身長の10代と低身長の10代が二極化しつつある点です。170センチを超えるとそのまま180センチ前後の高身長の人が多い。一方で170センチに届かない場合は、165センチを下回る人が少なくない」

 伸びる人は伸び、伸びない人は伸びない……。身体を動かしているか否かといったこととも無関係ではなさそうだから、スポーツ庁と厚労省は一丸となって取り組んでほしいもの。

 ちなみに、

「かつてのように、結婚の条件として身長があげられるケースはほとんどなくなりました。今は、四低(低姿勢・低依存・低リスク・低燃費)を重視すると言われています」

 とのことなので、低身長を過度にデメリット視する必要はない。

 とはいえ、子どもの体力低下に加え、10代の低身長化は気になるところ。子どもや親に「身体を動かしてください」と丸投げするのではなく、どうしたら身体を動かすようになるのか──。これからの日本を担う子どもたちの問題、決して“他人事”にはしておけない。