“僕は君のために飲んでいるんだよ”
「ある日、夫から“科学を理解してくれ”と言われました。もう耐えられなかったのでしょう。おかしくなった私を見るのもつらかったと思う。夫は私のすすめる怪しい治療や療法は一切、信じていなかった。とにかく、抗がん剤治療だけをやりたかったのです」
哲也さんから“誰のためにやってるの? 僕は君のために飲んでいるんだよ”と言われて、ようやく自分の異常さに気づいたという。そして、その日を境に、すべての代替治療をやめた。
自分や愛する家族が難治がんになったとき、冷静でいられる人はいるだろうか。
「当時はパニック状態で正常な判断能力は持っていなかったと思います」(轟さん)
そんなときに“治る”、“克服した”という「甘い言葉」に患者や家族は引き寄せられていくのだろう。
「『希望の会』でも、がん体験者はみんな“自分の病気に対してはある程度、冷静でいられる。でも家族の病気は本当にどうしていいかわからなくなる”と言っています」
特に家族は“患者のために何かしたい”と、確かでない情報にも飛びつきがち。そうならないためにも、正しい情報の見分け方を知ることはとても大切だろう。
まずは疑い、正確な情報を知る人に確認を。
大須賀先生は正しいがん情報を発信するなかで、うその情報がどのように宣伝されているかをつぶさに見てきた。
「怪しいがん治療の宣伝に多いパターンがわかるようになりました」
と、大須賀先生。これを知っておけば、一般の人でもある程度、偽情報かどうかを見抜けるという。
以下に注意が必要な宣伝の文言を紹介している。これらの文言が出てきたときには、まず疑い“怪しいな”と思うことが第一歩だ。