最後まで誰かとつながっていたい

 死に急ぐ若者たちに死を思いとどまらせることも、大人たちの、社会の務めだ。

 末木准教授が'15年に実施したアンケートの結果に、ヒントが隠されている。

「対象は20代限定でしたが、ツイッターで『死にたい』『自殺したい』と発言している人は、それを言わない人らに比べると、自殺のリスクが高いことがわかりました。『死にたい』と適当に言っているわけではないのです」

A子さんは自殺前日に、その胸の内とともに配信する理由をSNSに投稿していた(現在は削除)
A子さんは自殺前日に、その胸の内とともに配信する理由をSNSに投稿していた(現在は削除)
【写真】A子さんが生前にSNSで残していた「生きづらさ」

 SNSの投稿で事前に察知できる自殺願望。

SNSに『死にたい』という書き込みをしている人、自殺の動画などを見て“私も自殺したい”という気持ちになっている人は、死ぬ選択ではなく、専門のカウンセリングを受けてほしい。自殺以外の方法や回復への希望が見えてきます」(前出・前田室長)

 と強く訴える。さらに、

虐待経験やトラウマのある人でも、回復のルートはあります。1回の相談だけで問題がすべて解決するわけではありませんし、自分にトラウマを残した人への恨みもすぐに消えるわけではありませんが適切な回復ルートに入れば、回復は必ずあります。

 例えばNPO法人ライフリンクのウェブサイト内には問題別に支援先を紹介している『いのちと暮らしの相談ナビ』といったページもあります」

 と言葉に力を込める。

「10代の子どもたちにとっては、家と学校が世界のすべて」(前田室長)で、そのしがらみから逃れる手立てとして死という選択肢が浮上する。親や先生という縦のつながり、友達という横のつながりが窮屈になったら、

「斜めの関係をつくってほしい。例えば塾やフリースクール、地域の子ども食堂もあります。ネット上だけでなく顔の見えるリアルな関係と居場所になる場所を、学校と家じゃない場所に見つけてもらいたい。親じゃない大人の存在も必要だと思います」(前田室長)

 冒頭のA子さんは、SNSに《人生何とかならないかな?自殺しなくてもなんとかならないかな》という心の揺れも投稿していた。「最後まで誰かとつながっていたいという気持ちの表れ」(前出・渋井さん)という自殺配信の蔓延を防ぐためには、「自殺のベースになっている孤立化」(渋井さん)を防ぐことが肝心だ。


NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク「いのちと暮らしの相談ナビ」http://lifelink-db.org/

心理相談室サウダージ http://www.saudade.biz