――実際にはどんなことを話し合っていかれたんですか?
高崎親方 相撲協会には先発する「地方場所部」という部署があり、担当親方が各地方に約1か月半前から入って準備をします。最初はその先発隊と、どうしたら濃厚接触を避けられるか? を話し合いました。地方場所は体育館での開催で、国技館と違い協会員とメディアの人たちを完璧に導線を分けるのが難しいので、一つ一つ確認して分けていったんですね。そういう細かいことです。毎日ちょっとずつ、「今日はこういうことがあったんでこうしていきましょう」と、みんなで共通認識をするようにしました。
――どういうメンバーだったんですか?
高崎親方 20人ぐらいです。行司、呼出し、床山。さらに若者頭、世話人。そして立会人や木戸、審判、警備といった親方たち。それぞれの中から各1~2人ずつが集まりました。
――最初のころはチームを組んだといっても、何もわからない状態からのスタートですよね。
高崎親方 最初は何を議題にするかもわからないから、会議も1時間ぐらいかかりました。毎日、午後2時から集まって、それぞれが問題を解決していくんじゃなくて、問題意識を共有して動いていこうと話し合いました。
例えば、支度部屋に記者を入れないことになると、力士だけになって緊張感がなくなってしまうから、じゃ、誰か管理責任者を置こうとなって、立会人の親方が「オレたちがやるよ」って手をあげてくれたり。
メディアの方々による取材も、その日その日で取材を受けるおすもうさんもいれば、受けないおすもうさんもいるじゃないですか。それは普段からそうですが、こういうときは記者の方も特に心配されたりするので、取材を受けないおすもうさんには一言聞いてくる、そういう担当の親方を配したりもしました。
相撲ファン賞賛のご挨拶
――それでもやっていくうちに、問題が起きてくることもありましたか?
高崎親方 水つけ、ではひしゃくに口をつけないで“フリ”だけをするはずだったんですが、水はちゃんと入っていたので、間違えて口を付けてしまうおすもうさんが最初のころは何人かいて、「部屋に注意してください」とプロジェクト・メンバーから直接、注意をお願いしました。それからNHKさんにも、「あんまり水をつけるところ(の映像)はアップにしないでください」って広報部からお願いにあがったりもしましたね。
――普段だったら全く気を遣わなくていいところまで細かく目を配り、まるでプロのイベント屋さんみたいなことまでされていたんですね。
高崎親方 そうです。初日と千秋楽の「協会ご挨拶」も、初日の朝にみんなで話し合って、あの形になったんです。発案は八角理事長で、初日の2~3日前に「協会挨拶はみんなでやりたい」と伝えられました。そこで、みんなでやるタイミングと、テレビの前のみなさんに、よりメッセージが届くようにするためにはどうするか? を考えて、あの形になりました。
――あれを考えた人はすごい!って相撲ファンはみんな賞賛してました。
高崎親方 ああいう並び方は、明治神宮で毎年行われている「力士選士権」などでもとっているものです。全親方衆も並ぶという案もあったんですけど、それよりも力士中心にして、紋付き袴の審判の親方が並んだ方がカッコいいのでは?となりました。プロジェクト・チームで考えた結果があのようにきれいに収まって、会議してよかったです。
でも、それが千秋楽でもできるとは、最初は全く想像もしてなかったですから。千秋楽に協会挨拶ができたというのは……本当に奇跡で、めまいすらしましたね。