「歯科衛生士や歯科医の感染リスクが高いのは当然です。私を含めた多くの医師は、ウイルスを通さない『N95マスク』を着用しますが、歯科医院だけは一般的なマスクを使っていますから」

 と話すのは、感染症専門医で東京・品川区の『KARADA内科クリニック』の佐藤昭裕院長。

歯科衛生士の防護装備を

 米紙ニューヨーク・タイムズは先ごろ、職業別の感染リスクを報道。最もリスクが高かったのは歯科衛生士で、歯科助手、歯科医と続くなど医療従事者が上位にランクインした。国によって職場環境や仕事のスタイルがやや異なる職種もあるが、米国よりも先に新型コロナウイルスと戦い始めた私たちにとって興味深いニュースだ。

 なにしろ国内情勢は混迷をきわめている。

 厚生労働省のクラスター(感染者集団)対策班は4月15日、対策を全く取らないと国内の重篤患者は約85万3300人にのぼるとの試算を公表。重篤患者の約49%が死亡したとする中国のデータなどに基づけば約42万人が命を奪われることになる。政府は同16日「緊急事態宣言」の対象地域を全国に広げた。こうした危機的状況下にあっても仕事をせざるをえない人は多く、足元の感染リスクを見直す必要がある。

 歯科衛生士や歯科医はマスクに加え、フェイスシールドを装着することも。しかし、必ずつけているわけではない。

 医師でNPO法人『医療ガバナンス研究所』の上昌広理事長が説明する。

「フェイスシールドを着用しても、治療や処置で飛び散る細かいしぶきを完全に防ぐのは無理。長時間、バイ菌だらけの口の中をいじるわけですから。いまの歯科は、歯石を取るなど定期的クリーニングが増えており、歯科医よりもクリーニングを担当する歯科衛生士のほうが処置時間は長い。せめて防護装備はしっかり整えてあげてほしい」