興味深いのは4位の強心剤である。4月13〜19日では前年比で40.7%だが、2月1週目の時点ですでに前年比73.6%と、3割近く減少していた。時期からすると、外出自粛を原因とみるには無理がある。
強心剤というと、循環器系の疾患を抱える人が持ち歩く西洋薬、それも処方薬を連想しがちだが、この調査の集計対象は市販薬。売り上げが大きく落ちているのは、実は漢方薬なのだ。
市販の漢方薬が売れなくなったワケ
漢方薬メーカーの業界団体である日本漢方生薬製剤協会のホームページには、日本の漢方医学は、奈良時代以降に日本に伝来した「中国起源の伝統医学を基に、日本で独自の発展を遂げた伝統医学」とある。
日本の漢方薬は品質への信頼度が高く、世界シェアは8割とも9割とも言われている。本家本元でありながら数%にとどまる中国を大きく凌ぐ数値だ。
中国人にも人気が高く、処方箋なしで買える漢方の市販薬は、訪日中国人観光客が爆買いしていく製品の1つだった。
厚生労働省が毎年公表している「薬事工業生産動態統計」で、過去25年間の漢方製剤等(漢方製剤+生薬+その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品)のうち、一般用の生産金額を集計したものが下のグラフである。
2019年度分の公表は今年夏まで待たねばならないので、集計できたのは公表済みの2018年度分まで。2018年度の漢方製剤等の生産金額は1927億円で、このうち一般用はわずか404億円にすぎない。それでも、2014年度から2018年度までの5年間での伸び率は66%。医薬品全体ではおおむね横ばいであるのに対し、驚異的な伸び率だ。
公表済みの月次実績は4月17日公表の今年1月分が直近のもの。この時点では、医療用も含めた生産金額は前年同期比で3割増だった。訪日中国人観光客の爆買い需要喪失の影響が生産金額に本格的に表れるのは、これからだろう。