場所開催に固執する理由

 勝武士さんの本当の病状も明かさなかった。マスコミだけでなく、竜電はじめ高田川部屋の力士仲間にすら、“容体は安定している”“快方に向かっている”と、最後まで伏せ続けたという。

「協会は亡くなってから“詳しい話を病院から教えてもらえなかった”なんて弁解していますが、本当の病状が協会に報告されていなかったとは考えられません。間違いなく耳に入っていたはずです」(同・スポーツ紙記者)

 そのころすでに全国に緊急事態宣言が発出。協会の外では外出自粛が叫ばれ、内ではクラスターが発生し重篤者まで出していた最中、信じられないことに、夏場所初日を2週間延期しただけで、開催優先の姿勢を崩さなかった。

「5月の夏場所中止を決定したのは5月4日。緊急事態宣言が延長されたことで、ようやくです。野球やサッカーなどほかのプロスポーツが早々に公式戦の中止や延期を決める中、相撲だけが最後まで開催に固執していた印象は否めません」(全国紙記者)

 協会は今回の7月場所の開催予定も変更していない。開催へ向けた安全対策として「希望する協会員にコロナの抗体検査を実施する」としているが、検査をしたから安全だという保証はどこにもない。

 言うまでもなく、相撲という競技自体が人と密着する“3密”状態。力士と親方、裏方まで大人数が同じ建物内での共同生活を送る相撲界独特の生活様式も感染予防の観点からは問題視されている。この状況に、一部の親方や力士から協会に対する不信の声も上がっている。ある相撲部屋関係者が声をひそめる。

「口にこそ出しませんが“ウチの部屋でも感染が起これば、同じような事態が起こりかねない”と、みんな不安です。中には“協会は力士たちをモノだとでも思ってるのか”と憤りをあらわにしている力士もいます。だって7月場所より遅く、広い甲子園で開催される夏の高校野球だって中止でほぼ決まりだと言われているんですよ? “7月場所をやるために勝武士の病状を隠していたのか?”と訝られてもしかたないですよ」

 尊い命が失われてなお、協会側が、場所開催に固執するいちばんの理由は、カネだ。 

「チケットの売り上げが10億円。これにNHKから支払われるテレビ中継の放映権料5億円が加わり、1場所でざっと15億円が協会の懐に入る計算。中止にしてしまうと、これが全部消えてしまうんです」(同・部屋関係者)