命を守るためには、いかに備えておくか
(11)ハザードマップで平時からいちばん低いリスクの確認を
いざ、このような情報が生かされるかどうかは、事前の心構えがあるかどうかが分岐点になる。担当者が続ける。
「災害のときはパニックになったり、どうしていいのかわからなくなります。あらかじめ行動のシミュレーションができているかが大切だと思います。市町村が洪水ハザードマップを作っています。それで浸水の範囲や避難場所などがわかりますが、その際どのルートを通ったらダメかも見たほうがいい」
場所によっては道路が水没、アンダーパスが浸水したり、斜面が崩れて通行できなくなったりするおそれがある。大雨は複合的にいろいろ起きるので、それを踏まえて、いちばんリスクが低い経路はどれだと、それを探す必要がある。
(12)家族で避難の話し合いを
「状況別に家族で話し合っておけば、家族のことは考えずにまず避難できます。そのくらいの信頼関係をつくり、有事のときの迷いを少なくすることは対処の基本だと思います」(担当者)
(13)猛暑でマスク着用が危険
コロナ禍で迎える今年の夏。いつも以上に気象災害の危険性があるのは熱中症だ。
「すでに熱中症への注意を呼びかけていますが、マスクをすると熱がこもりやすいのでより危険性が増します。炎天下でのマスクは、サウナの中でマスクをするようなもの」
と蓬莱さんは指摘する。
「マスクをしてほんの10分でも。登下校、買い物などでの外出時、熱中症のリスクはいつもより高い。マスクは自分の吐いた湿気を含んだ息を吸います。そのためのどの渇きに気づきにくいといわれています。周りに人がいなければはずすなど、上手な使い方をしたり、水分補給と休憩は意識的にとるなどしてください」
(14)頻発する地震にも注意を
注意するのは気象だけではない。予測困難な巨大地震への備えも必須だ。
「地震もさまざまな要因で(大雨や台風同様)被害の程度は変わってきます」
『国立研究開発法人 防災科学技術研究所』総合防災情報センター長の臼田裕一郎さんは指摘。同研究所が公式サイトで公開している『地震ハザードステーション』は事前の構えに有効だという。
「今後30年間で震度6弱以上の揺れに見舞われる確率など地震についてさまざまな情報が得られます。
特に注意したいのは社会としても大きな被害を及ぼすであろう『南海トラフ地震』や『首都直下地震』です。ただし、こうした大きな地震でも揺れ方や建物の築年数、構造、形状や土地の状態、場所などで自宅や周辺の建物は倒壊を免れることもあります。これはいろいろな要素が絡んでいます。命を守るためにも、まず家具の配置などから考えてみてください」
(15)命を守るために備えて
予想ができる大雨や台風、いつ起きるかわからない地震であっても、前出の専門家らが共通して訴えることは、命を守るためには、いかに備えておくか。結果的に生死の分かれ目になる。
「とにかく自助。自分の身は自分で守ることを意識していただきたい。行政や民間サービスなど、普段だと受けられるものも、災害時には受けられなくなります。不便もたくさん出ますので、自分の命と生活を守る準備は普段からしておいてほしい」(臼田さん)
家族全員で家族の安全に向かい合う。そんなことが求められている時代だ。
(取材・文/稲垣暁)
稲垣暁 ◎災害プラットフォームおきなわ共同代表理事。沖縄国際大学非常勤講師・防災士・社会福祉士。毎日新聞社に勤務していた1995年に阪神・淡路大震災で被災。以後、災害弱者支援や被災地交流、地域・学校などでの防災教育活動に携わる
蓬莱大介 ◎気象予報士・防災士 2011年より読売テレビで気象キャスターを担当。『情報ライブ ミヤネ屋』『ウェークアップ!ぷらす』『かんさい情報ネットten.』などでレギュラー。講演、コラム執筆、ラジオDJなど多方面で活躍。著書『クレヨン天気ずかん』(主婦と生活社)『空がおしえてくれること』(幻冬舎)など