「そもそも、現代人が普通に話している“はひふへほ”、実はこれら、古代の日本ではすべて“ぱぴぷぺぽ”と発音していたのです」
そう教えてくれたのは、言葉を研究する、大東文化大学文学部教授の山口謠司先生。なんと、私たち日本人が“はひふへほ”と発音できるようになったのは江戸時代からなのだとか。
「日本最古の歴史書とされる『古事記』などが書かれた西暦700年くらいにはすでに“ぱぴぷぺぽ”と発音していて、『源氏物語』あたりのちょうど西暦1000年くらいには、“ふぁふぃふゅふぇふぉ”と発音するようになりました。江戸時代になってようやく、現在の“はひふへほ”の発音に変化していったのです」(山口先生、以下同)
そして現代に残ったのがパ行とハ行というわけ。つまりは“半濁音”は、日本人にとって古来より馴染みのある言葉なのだ。
「奈良時代には、お母さんのことを“はは”ではなく“ぱぱ”と言っていたんですね。日本の読み方に“にほん”と“にっぽん”と2つの読みがあるのも、その名残りというわけです。また“ぱぴぷぺぽ”は語感の面から言うと、少し赤ちゃんぽいかわいらしい印象を受けると思います」
確かに、何かとかわいらしく見せたい女子中高生。「ぴえん」や「べびたっぴ」が流行ったのは必然か。きゃりーもまた、「はみゅはみゅ」よりかわいいのは「ぱみゅぱみゅ」だろう。
「“ふくふく”よりも“ぷくぷく”のほうが、パンパンと張ったかわいらしい赤ちゃんのイメージが膨らむと思います。また、赤ちゃん言葉であると同時に、“パーンパーン”や“ピューンピューン”と聞くと、子どもが生き生きと元気よく跳ねているような躍動感を感じませんか? 」
「バカ」「ブス」濁音は悪口が多い
半濁音の語感には、子どもに好かれる、ウケるという効果もありそうだ。
「“ピカチュウ”や“ポケモン”は子どもに受け入れられる名前をつけていますよね。実際、“ばびぶべぼ”のような濁音から始まる言葉は、“ゴミ”“ブタ”“バカ”“ブス”など悪口のような汚い言葉が多く、日本人が嫌う傾向にあるのです。
“かいじゅう”や“ゴジラ”は強そう、怖そうな感じがしますが、かたや“ピカチュウ”は子どもっぽい生き生きしたかわいらしい言葉に聞こえます。“ぱ”と“ば”で同じハ行の言葉なんですけども、与える印象は全く違いますね」