時代ともに変っていった「ピンク」
ちなみに、ピンク髪の流行にはひとつの兆しがあった。昨年1~3月期に放送された連ドラ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)の横浜流星だ。深田恭子扮する予備校講師に恋をするピンク髪の高校生を演じ、一気にブレイク。同名マンガの原作者・持田あきも、そのハマり具合を絶賛していたものだ。
松本さんによれば「私服も衣装もハイブランドをさらりと着こなす横浜さんがピンクヘアにするということは、“ピンク髪”の流行を象徴するようだった」とのこと。また、こんな変化もブームにつながったと指摘する。
「ヘアカラーの技術が向上し、ブリーチなしで出来る暗めトーンのピンクから、ブリーチをして染める明るく鮮やかなピンクまで、ヘアカラーでさまざまなピンクを表現することができるようになりました」
とはいえ、伝統的に見れば、ピンクは女性的なカラー。「ピンクリボン運動(乳がんの啓発キャンペーン)にこの色が用いられているように、ピンクは女性と結び付けられてきて、そのイメージは根強い」わけだが――。ここ数年はそうでもなくなってきた。松本さんはその例として、韓流スターのオルチャンメイクや日本の特撮ヒーローを挙げる。
「『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日系・16~17年)の戦闘コスチュームには、ピンクがうまく取り入れられ、人気を得ました」
つまり、男の子が憧れるヒーローにも違和感なくハマるようになったピンク色。さらに芸能界において、ジェンダーによる色分けを超えたオシャレで成功したのがりゅうちぇるだ。髪がピンクでないときは、服をピンクにするなど、そのこだわりはデビュー当時から印象的だった。
そんなピンクが大好きな「ジェンダーレス男子」りゅうちぇるも、2年前には1児の父に。最近は若者の代弁者として、社会派的発言も評価されている。
「ブリーチをすると髪の手触りがごわごわするのですが、りゅうちぇるさんはさらさらのストレートヘア。個性的でおしゃれな私服とともに、美意識の高さが伺えます。また、ピンクは子どもが好きな色のひとつ。父親になり、お子さんを喜ばせたいという心理もあるのかもしれません」(前出・松本さん)
女性がピンク髪にすれば、新鮮な可愛さやかっこよさにつながり、男性がそうすれば、現代にふさわしい親しみやすさをかもしだすことに。このブーム、まだまだ広がっていきそうだ。
話を聞いたのは……●松本英恵●2003年より、フリーランスのカラーコンサルタントとして活動。2005年、総合情報サイト『All About』にてカラーコーディネートガイドに就任。同サイトの900名を超えるガイドの中で読了率1位を誇る(2016年)。他にも雑誌など多数のメディアで活躍。https://allabout.co.jp/gm/gp/
(取材/編集部 文/宝泉薫)