「かわいそう」無責任な周囲の声
「私ってかわいそうな子なの? と娘に聞かれました」
と話すのは東海地方在住の伊藤まさこさん(仮名・37)。伊藤さんは小学校3年生の娘・凛ちゃん(仮名・9)と夫の3人暮らし。凛ちゃんが学校を休んでいることは近所でも有名だという。
「田舎特有の村社会で。クラスも1クラスしかないですし、うちがコロナを理由に休んでいることはすぐに知れ渡りました。
娘は不安感が強い子で、毎日コロナのニュースを見てウツぎみになってしまったんです。それで休校を決めました。担任は凛の性格を知っているので理解してくれましたが、学年主任と教頭から“過保護じゃないですか?”と言われました。
家の前で体力づくりのために縄跳びなどをしていると、通りすがりの近所のおばあちゃんとかから“学校に行けないんだって? かわいそうに”としょっちゅう言われます。それで娘が“私って、かわいそうなの?”って。そんなことないよ! かわいそうって言う人がかわいそうだね、と言いました」
無理に学校に行かせずに安全な場所を提供した伊藤さんのサポートのかいもあり、凛ちゃんも心の健康を取り戻しつつあるという。
「本人が学校に行きたい! と言ったらすぐに通わせようと思いますが、周囲のお友達に何か言われないか、不安が募りますね」
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『学校が子どもを殺すとき』の著書があるジャーナリストの渋井哲也さんは、コロナで学校に行かないことは評価する一方で注意点があるという。
「学校との接点をなくさないこと。担任が信頼できないなら学年主任や教頭など誰か1人は理解者をつくっておくこと。
もうひとつは親が孤立しないこと。学校で学ぶいちばん大切なことは人間関係の構築です」
今回取材した2組の家族は特別過保護でも、モンスターペアレンツでもない。新しい生活様式と同様に、アフターコロナの世界ではそれぞれの価値観で行動できる親の勇気が、子どもを救うのではないだろうか。