野犬よりも人間に慣れていない子も
A子さんが飼っていたのは中型犬1匹だけで、いつの間にか増えて世話をしきれなくなり、住居を捨てて“通い”になったようだという。
解決が難しい多頭飼育問題は、この6月から改正動物愛護法が施行され、罰則が強化されたほか、行政機関に立ち入り検査の権限を与えるなど取り組みやすくなった。
この事件では、警察当局による犬の保護活動に兵庫県動物愛護センターが協力。かけがえのない命が守られた。
「66匹のうち約半数は動物愛護団体などに引き取ってもらえた。残る個体もこうした団体や個人に譲渡する道を探っていくことになりそう」
と関係者。
犬たちは元気なのか。
預かった動物愛護団体のひとつは、「少しずつ元気になってきていますよ」と説明する。
「人間と共生できるように育て直しをしているところなんです。放置された生活を続けてきたためか、野犬よりも人に慣れていない子もいる。
例えばお皿にエサを盛ってあげても上手に食べられずひっくり返してしまう。トイレのしつけもできていません。リードや首輪をつけた経験がないから、過剰に嫌がって散歩に連れて行けなかったりもします。でも、少しずつ成長していますよ」(担当者)
シャンプーし、ノミを取ってあげて、お腹の中にいる虫を駆虫薬で排出。おやつはもらったことがないから最初は食べなかった。人間と同じ時間帯の生活に慣れたら、「里親を探してあげたい」(同)という。
一方、空き家にたまった糞尿はそのまま。近隣住民は三木市に対し、家屋の消毒や清掃、管理保全を要望したが、市はどう対処するのか。
「近隣住民のつらさはよくわかったので、どのような方法で解決するのがいちばんいいか、具体策をしっかり検討していきたい」(市生活環境課)
犬にも人間にも“最低限”の生活を送る権利がある。