2年生でキャプテンに任命
名伯楽率いる守山中学は、久美さん入学前からバスケットボールの強豪校として全国にその名をとどろかせていた。
そんな守山中学監督である井上先生の指導は、切磋琢磨することで実力をつけていくものだったと久美さん。
「3年計画でそれぞれの学年でチームを作り、練習試合や学校内で試合をするときには、3年生対2年生、2年生対1年生とかで試合をするんです」
上級生は下級生には負けられないと真剣になるし、学年内の結束も強くなる。
この時代の久美さんを知り、大学に入ってからは親友となる半谷聡子さん(52)が、当時の守山中学をこんなふうに言う。
「私は他校だったんですが、守山中は雲の上のチームでしたね。試合をすると100対15とか100点ゲームになるのは確実。すごかったです」
そんな強豪校は、部活でありがちな下積みがほとんどないのも特徴だった。
「本試合直前を除き、1年生はボール拾いや声出しばかりといったことがまったくないんです。1年から3年生までほぼ同じメニューを、一緒に組んで練習しました」
井上先生はそんな学年ごとの対抗戦や練習の様子を見て、学年に関係なく選手を選ぶ。
スポーツとビジネスは重なる部分が大いにある。新人は下積みばかり、起用されるのはエリートや上級生ばかりでは、どんな素質を秘めた人材だって腐っていくばかりだ。
「(経営者となった現在では)人材をよく見、適材適所に置くことを心がけています。これは井上先生の影響ですね」
真珠が貝のなかで少しずつ真珠層を育んでいくように、バスケでの経験が未来の経営の源となって蓄積されていく。
2年生のとき、思いがけないことが起こった。キャプテンに抜擢されたのだ。
「2年生と3年生で試合したときに下の学年だった私たちが勝ってしまったことがあったんです」
上級生のふがいなさに井上先生が激怒、久美さんがキャプテンに任命されたのだ。
キャプテンには人を引っ張っていくキャプテンシーが欠かせない。2年生の立場で上級生を引っ張って、さらには先生と選手、双方の要望や不満をくみ上げ調整する、パイプ役まで担うことになってしまった。
「2年生で(キャプテンナンバーの)背番号『4』をもらったときには泣きました。でも、先輩たちにしたら“なんで2年生がキャプテンになるの!?”となるわけですよ。キャプテンとして指示すると、“2年生の分際でなに威張ってるのよ!”だし、指示をしないと“キャプテンなのになんの指示もしない”(笑)。まあ1日とか2日の話でしたけどね」
突如として代表を務め戸惑うことになる未来を、どこか彷彿とさせる話である。