茨城で“地元の子”として過ごした兄とティファニーさん。今は茨城弁を忘れてしまった
茨城で“地元の子”として過ごした兄とティファニーさん。今は茨城弁を忘れてしまった
【写真】茨城で“地元の子”として過ごしたティファニーさん、母と兄との3ショット

 日本で暮らす中では差別されたことはなかったというティファニーさんの経験を、アメリカでは信じてもらえない。そもそも「日本生まれ日本育ちの黒人」など、米軍関係者のほかにはいないと思われている。

当事者でなくても知ることで理解を

 ティファニーさんの両親は、積極的に黒人差別について子どもたちに教えることはなかった。「人種で人間を分けるものではない」と考えているからだ。しかし、ティファニーさんがアメリカで差別を経験したタイミングで、奴隷の歴史、黒人差別について教えてくれた。日本にいるとき、兄がいじめに遭っていたことも、大人になって知った。

「中学、高校になってから、いじめに遭ったという話をよく聞きます。あのまま日本にいたら、私もいじめられていたのかもしれません」

 アメリカでの生活は「黒人らしさ」を求められることもつらかった。身振り手振り、声を大きく、というステレオタイプの黒人像を意識させられる。「元の人生に戻りたい」という思いで日本に帰ってきた。大学に通いながら、縁があってYouTuberとして発信も始めた。

「日本に住む人の95%は日本人。あとの5%のことは、誰かが伝えないとわからないのだと思います」

 最近、日本でも黒人差別に抗議するデモが東京や大阪、沖縄などで開催された。ティファニーさんの友人は「私も参加してもいいのかな」と連絡してきたという。

「当事者でもないのに、黒人に怒られないかな、という不安があるのかも。ちゃんと知って理解してくれたら、参加しない理由なんてないです」

 踏まれた痛みは、厳密には当事者でなければわからないのかもしれない。それでも、「どういう人間であるかを、外見や肌の色で判断するのは無理があるし、しないでほしい」と、ティファニーさんは願ってやまない。

(取材・文/吉田千亜)


【INFORMATION】
ティファニーさんYouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCPGuiAfIPU1amPhKMQ8RIVw
インスタグラム
https://www.instagram.com/tiffrichx/