高須克弥院長と林葉直子

 その前日、私の交友関係の中では最も林葉さんと親しい、高須院長にお電話した。

 高須院長といえば、漫画家・西原理恵子の人生のパートナーとしても知られている。理恵子ちゃんと私は同じ年で長年の仲よしだ。

 高須院長もがんを公表されて大変なご闘病中だが、私からは変わらずお元気そうに見える。

 だが高須院長もまた、闘病だけでない数々の修羅場をくぐってきた御方。私の仲間意識とも違う、同志愛、戦友のような気持ちを林葉さんに抱いておられるのだ。

「僕はね、天真爛漫で純粋な女性が好きなの。でも、そこに才能がなきゃならない。どちらも備えた女性を見ると、好きになるし助けたくなる」

 ああ、それはもう現在のパートナーを見ればわかります。

「ただの天真爛漫、純情、それは妖精のようなもんでしょ。僕が手助けや世話をする意味はない。その辺をひらひら舞ってりゃいいの」

 林葉さんは、妖精っぽいところもありますけどね。理恵子ちゃんは……妖精というには、いろんな意味で重量感がありすぎる。

「林葉さんに、名古屋の僕の病院で治療をしたらと誘ったこともある。また仕事をしましょうと、申し出たこともある。だけど彼女は断るんだ」

 普通は、大金持ちの有名な素晴らしいお医者様にそんな手を差しのべてもらえたら、飛びつきますよね。何を遠慮し、躊躇っておられるのでしょうか。

「まずは、先生にご迷惑をかけたくない、というんだよ」

豊胸後に出版した写真集
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 それ、わかりますね。一見ぐいぐい前に向かう人に見えますが、ちゃんと横も後ろも先も見ているというか。あと、やっぱり純情で、強かに生きられないんですね。

「そう。夢見る少女なの。うちの熊(註・理恵子ちゃんのあだ名。由来は諸説あり)も純情でまじめなんだけど、林葉さんに比べればリアリストだからね。林葉さんみたいに、~だったらいいな、と世の中を見ない。~はダメでしょ、とばっさり切れる」

 私も何度も、どっしりと足腰の強い熊によって現実に引き戻されました。

「そして林葉さんは、御心配いただくのはありがたいけれど、私は今のままで十分なんです、ちゃんとやっていけてますから、というんだ」

 うーん、それはなんだろう、そこは私には、ちょっとわからないですね。自尊心の強さなのか。やっぱり、夢を見る少女だからなのか。

「彼女は嘘をつけない人だから、本当に思ったままをいってるんだよ」

 高須院長のおっしゃることはいちいちすべて納得できたはずなのだが、さらに何かしらもやもやする謎、何かちょっと引っかかるものも持ち、飛行機で福岡に飛んだ。