国民に平和の大切さを伝えていただきたい
そもそも戦没者追悼式が初めて行われたのは'52年で、日中戦争以降の戦没者を悼むための式典である。
昨年、追悼式に参加し兵庫県代表として献花した森本堅介さん(79)は、戦争の悲惨さを次世代に継承することが大事だと訴える。
「昨年は献花という重責を感じながら参加させていただきました。しかも、ちょうど両陛下の目の前の席となり、手足が震え、言葉に言い表せないほどありがたい体験で、献花した際には涙が出ましたね。
上皇ご夫妻は平成時代、世界各地の戦争地にまで足を運んで慰霊され、戦争体験を語り継がれました。われわれも同じように親から子、子から孫に、戦争の悲惨さを絶対に語り継がなければなりません。今後も両陛下には、追悼式へのご出席を通じて、平和の大切さを国民に伝えていただきたいと思います」
今年の式で献花した岩手県に住む浦川福一さん(75)も、上皇ご夫妻や現在の両陛下に感謝の意を表す。
「私の父親は'45年の2月に、フィリピンのルソン島で22歳の若さで亡くなりました。私はこの年の4月生まれなので、実際に父と会ったことはありません。父は家族に“今度会うときは『靖国神社』で。天皇陛下万歳”と伝えて逝ったと聞いています。
つまり、両陛下に式典に出席していただくこと自体が、遺族にとってはありがたいことなのです。コロナ禍で大変な時期にもかかわらず、参加していただきうれしい限りです。“もう2度と戦争はしないように”という、上皇ご夫妻や両陛下の決意が感じられます」
皇室を長年取材するジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡邉みどりさんは、平和に対する上皇ご夫妻の並々ならぬ思いについて次のように解説する。
「コロナで大変な時期に、両陛下が追悼式に参加されるのは、上皇ご夫妻の思いをいちばん近くで感じていらっしゃることも大きな理由でしょう。
上皇さまは皇太子時代に“日本人が忘れてはいけない4つの日”について言及されました。これはお子さま方にもきちんとお伝えになっており、当日は毎年、天皇ご一家や秋篠宮ご一家も必ず黙祷されています。
上皇ご夫妻は平成時に国内だけではなく、世界の各戦地を慰霊されるほど、戦争に対して強い思いがあるのです」