破綻寸前の航空会社を再建させるべく奮闘する半沢直樹。その半沢と真っ向から敵対する弁護士・乃原正太を演じているのが筒井道隆ドラマ後半のもうひとりのキーマンだ。

 8月16日の放送回で初登場すると、大和田常務ばりの憎々しい“顔芸”演技が炸裂。半沢との激しいバトルで披露した見事なまでの悪役っぷりに、SNS上には驚きの声があふれている。

《ヒール役が新鮮》

《あの『あすなろ白書』の掛居くんだよね?》

《イメージが違いすぎて分からなかった》

《私の中で、衝撃が収まらなかったよ》

 それもそのはず。これまでの筒井といえば、演じるのは“いい人”がほとんど。その代表ともいえるキャラクターが“『あすなろ白書』の掛居くん”。

『あすなろ白書』のときからずっと

 27年前、22歳の筒井がフジテレビ系の“月9”ドラマ『あすなろ白書』で演じた“優柔不断でちょっと頼りない好青年”掛居保のことだ。木村拓哉、石田ひかり、鈴木杏樹、西島秀俊ら、そうそうたる顔ぶれが出演していたこの青春群像劇で、天下のキムタクを抑えて世の女性のハートをワシづかみしたのが掛居くん─'90年に俳優デビューしたばかりの筒井だった。

「高校卒業直後の“ほぼ素人”で主演に抜擢された映画『バタアシ金魚』でいきなり『日本アカデミー賞』の新人俳優賞をとっちゃったんです。その勢いのまま話題作に次々出演して、あっという間に“トレンディードラマ俳優”のひとりに」(雑誌編集者)

 当時の人気はすさまじかった。

女性誌で毎月のように筒井さんの特集が組まれるくらいでした。自然体の演技が支持されていた理由ですが、それだけじゃなくて。筒井さん自身が照れ屋で謙虚で、まるで掛居くんそのまんまの朴訥とした雰囲気だったのも、女性人気に火がついた理由でしたね」(同・雑誌編集者)

 映画や民放ドラマだけでなく、NHKの大河ドラマ『功名が辻』や朝ドラ『私の青空』で主要キャストも務めてきた。

 その一方で、舞台にもこだわって、定期的に出演し続けている。

“舞台は撮り直しができない緊張感がいいんです”と。仕事を極力“掛け持ちしない”のも筒井さんのポリシーですね。なんでも“ひとつの役に集中して、その人間になりきりたいから”だそうで。『私の青空』では元ボクサーという設定だったんですが、演じるにあたってボクシングをイチから習って、現役の日本チャンピオンと練習試合できるまで役づくりに入れ込んだのは有名な話です」(ドラマ制作会社関係者)

 そんな筒井には、役者としてのポリシー以外にも、掛居くん当時から、“まったく変わっていないこと”があるという。

“チャリ通勤”なんです。『あすなろ白書』のころからずっと、いまでも、どこへ行くにも自転車(笑)。プライベートだけじゃなく、仕事のときも都内や神奈川、千葉くらいだったらロケ現場でもスタジオでも必ず自転車に乗って颯爽とやって来ますよ。これだけベテランになれば、普通は運転手つきの高級車で現場入りするものなんですが、筒井さんはそういうことにまったく興味がないらしくて」(同・ドラマ関係者)

『あすなろ白書』の掛居くんは好青年のままでした、とさ。