大麻について語った芸能人

 もっとも、大麻合法化を支持する有名人は彼女だけではない。かつて、俳優の窪塚洋介は著書のなかでこんな予言をした。

《『大麻』という植物がある。あらゆる意味で万能なこの草は、21世紀、人間にとって、そして地球にとって奇跡の草となる》

 自宅のあるマンションの9階から転落して、奇跡的に一命をとりとめた事故はこの翌年のことだ。

 また『スッキリ!』(日本テレビ系)のコメンテーターとして活躍するモーリー・ロバートソンは、今年1月、こんなツイートをした。

大麻、合法化しても何の問題もないっすよ。一度しかない人生、楽しいことしなきゃ始まらない。みんな、アメリカに行って大麻を試してみてください。考え方変わるから。Rules are made to be broken.​》

 最後の英文は「ルールは破られるために作られている」という意味だろうか。実際、米国では娯楽用大麻の使用が許可されている州もある。酒やタバコより安全だとする説もあり、これは大麻合法化支持者のよりどころのひとつだ。

 とはいえ、日本では違法であり、破れば罰せられることはいうまでもない。また、芸能界への影響も大きい。高樹の場合、女優業は引退しているとはいえ、逮捕されたときには『相棒』(テレビ朝日系)の再放送が差し替えられたりした。『相棒』は昼間の再放送でも数字がとれるキラーコンテンツだから、テレビ局やファンにとって、彼女にこれ以上の不祥事を起こされては困るのだ。

 なお、筆者の友人でドラッグ文化に精通していた故・青山正明は著書『危ない薬』のなかで大麻(マリファナ)の特殊性に言及している。「麻薬の語源は麻酔」で「麻酔として麻が利用された」のは事実だが、日本では麻がそれ以前から栽培され、衣服などに利用されてきた。「マリファナを吸ってのセックスはとても気持ちいい」などということがわかってきたのは、昭和になってからの話だという。それゆえ、農業用に栽培してきた人が多い事情を考慮して「麻薬及び向精神薬取締法」とは別に「大麻取締法」が作られた。

 つまり、名前に「麻」という字がよく使われるのも、昔から身近で役に立つ植物だったからだ。当然「大麻」からの連想ではない。連想してしまうのは、彼女のような大麻合法化支持者くらいだろう。

 ところで彼女、ツイッターでは高樹沙耶だが、フェイスブックでは本名の益戸育江で発信している。ややこしいので、ここはひとつ「麻」のついた名前に変えて統一してみてはどうか。そんなに大麻が素晴らしいものなら、名前にも入れてアピールすればより効果的だと思うのだけど──。 

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。