一方、諸事情で早めに年金をもらいたい人もいるだろう。その場合、受給開始を65歳より前に早める「繰り上げ受給」という手がある。1か月早めるごとに年金が0・5%減る仕組み。60歳まで早めることが可能だが、65歳スタートの人に比べると、年金総額は30%もダウンしてしまう。
「男性の場合、平均寿命を考えると、64歳でもらい始めれば亡くなる時点での年金総額が65歳スタートの人と並ぶ可能性が高い。1年くらいなら受給を早めていいかもしれません」(北村さん)
年金対策には『iDeCo』が超オススメ
さらに今年5月の年金制度法の改正で、令和4年4月1日以降に70歳になる人は、75歳まで繰り下げ受給できるようになった。受給開始が75歳になるまで待てば年金額は84%アップすることに!
おいしい話に思えるけど、前出・森永さんは否定的だ。
「一見よさそうに聞こえますが、実は高い年金をもらうことで、税金や社会保険料もバンバン取られるようになり、手取りが減っちゃうんです。75歳の繰り下げは、私はやめたほうがいいと思います」
また北村さんは、別の懸念を抱いている。
「繰り下げ受給の時期を75歳までにしたのは、年金受給開始年齢を引き上げる布石のような気がします。現在は原則65歳スタートですが、近い将来、68歳、70歳と段階的に引き上げていくつもりなのでしょう」
菅首相が自助や共助を強調するのも、布石と言えそう。
20代、30代の人たちも、将来を見据えて年金を増やしておいたほうがいい。
「個人型確定拠出年金のひとつ、『iDeCo』は年金を増やせるうえ、節税メリットもあってオススメ。ただ、60歳まで掛け金に手をつけられないのが難点です。まずは民間の個人年金保険を検討してみては? 年末調整でお金が戻ってきますし途中解約や借り入れもできます」(北村さん)
悲惨なのが就職氷河期世代の40代だ。非正規雇用が多く、将来もらえるのは国民年金だけ、という人も目立つ。
「もらえるのが国民年金のみという人は、まずは国民年金基金へ加入しては? 掛け金が所得控除の対象になるし、一生もらえるタイプのものもあって心強いですよ。余力があれば、自営業やフリーランスの人は小規模企業共済やiDeCoの検討を。税金面でも超お得です」(北村さん)
いずれにせよ、老後は年金だけでは足りないことが明らか。生活全般の見直しをしていくしかなさそうだ。森永さんは、老後に備え支出を絞っていくことをオススメする。
「現在、厚生年金のモデル年金額は夫婦で22万円ですが、少子高齢化の進行で今後は減らされていき、最終的には13万円になると予測されています。ですから、夫婦2人が13万円で暮らせる仕組みを作っておかないといけません」
特に減らしておきたいのが住居費、次に食費だという。
「都会に住んでいる人は、都会から電車で40分〜50分の郊外にある、適度に田舎な“トカイナカ”に生活拠点を移しましょう。一戸建てが安く買えて、庭で野菜を作れます。畑が30坪くらいあれば一家の野菜はほぼ賄えますよ。現に私が実践してます(笑)。どうしても都会で暮らしたいなら、一生働き続ける覚悟が必要です」(森永さん)
(取材・文/鷺島鈴香)