“痛い、苦しい”よりも“希望がない”ことに絶望する
コロナ禍が渦巻いた今夏、自ら命を絶つ人が激増。警察庁の統計によると8月の自殺者数は1849人で前年より240人増えており、特に春から夏にかけて女性や40代未満の自殺が目立った。
芸能人の自殺も続いた。女子プロレスラーの木村花さん(5月)、俳優の三浦春馬さん(7月)、芦名星さん、竹内結子さん(9月)の若者たちの死は社会に大きな衝撃を与えた。その背景に、新型コロナの影響があることは否めない。
石井さんは、
「私が取材する若者たちもみんな苦しんでいます。はたから見ると、みんな頑張っているように見えても心の内まではわからない。自殺はこの先も展望がないと思うことでおきます。“痛い、苦しい”よりも“希望がない”ことに絶望して、行動に出てしまう」
「突然の自殺の原因は、当人に直接話を聞いた専門家でなければ本当のところはわかりません。憶測で語るのは避けたほうがいいでしょう」
と説明するのは、心理カウンセラーで『心理相談室サウダージ』の前田昭典室長。
「自殺前に医療やカウンセリングに来てくれていれば、ほとんど何らかの精神疾患の診断がつき、治療をすることで自殺は防げます」(以下、同)
特に自殺につながりやすいのが、うつ病とアルコール依存だという。お酒は飲むと気分は一時的には上がるが、アルコールが抜けたときがいちばん危ない。
「悩みごとを抱えたままだと、飲んでも飲んでも酔えなくてそのうちに酔いつぶれて眠りから覚めたときに急激なうつ状態に。そして衝動的に行動に出るとみられます。お酒に逃げるのは危険です」
追い詰められたときの飲酒は考えの視野を狭める。酩酊状態になれば判断もつかず、恐怖心もなくなるため、衝動性が高くなるという。