運命は、自分の性格が呼び寄せる
ヤクザに限らず、極端な感情の発露が暴力に形を変えることもある。例えば、「好きだからこそ」と暴力をふるうDVや、弱みにつけ込んでの脅し。この手の暴力をふるう人間が身近にいた場合、対処法はあるのだろうか?
「以前、ヤクザに『いじめをなくすには、どうすればいいか?』と聞いたことがあるんです。返ってきた答えは、『反撃すること』。彼らのメンタリティーでは、いじめられっぱなしのやつは、いじめてもいいという発想があるらしい。でも、そこには圧倒的な男女の差や年齢差があるわけで。反発できないときは、一刻も早くそこから逃げるべきだと思います」
現役のヤクザも、はじめから暴力に明け暮れていたわけではない。居場所がなかったり、いじめられていた過去があったりするケースも多いという。
「本当に強い人はあっさりしてて話もわかってくれるので、武闘派からのクレームは処理しやすいです。だけど、いじめられていた人がヤクザになると、社会に復讐を始める。だから、その暴力には限度がないんです」
2011年3月11日、未曽有の被害をもたらした東日本大震災に付随して起きた福島第一原子力発電所事故。断片的な情報はアナウンスされるものの、なかで何が起きているのか伝わってこない──。
そのとき作業員として1Fに潜入し、誰よりも早く情報を発信したのも鈴木さんだ。その取材をもとに、ヤクザと原発との密接な関係を描いた『ヤクザと原発 福島第一潜入記』のなかで鈴木さんは、「暴力団と1Fは誰もが嫌がる危険な取材先で、だったら自分に向いている」と書いている。
「青くさいんだけど、昔からみんなが嫌がっているところに飛び込んでいくのが好きで、どこまで捨て身になれるかだったら負けないというのがあるんです。考えてみれば、中学生のころからそういうところがあったかもしれません」
男女交際にうるさい中学校だったにもかかわらず、毎日、彼女と一緒に登校した。冷やかしで雪玉を投げられ、教師には咎(とが)められ、学校中で問題になっても、一緒に登校し続けた。
「運命って自分の性格が呼び寄せているんじゃないかと思うことがあるんです。ヤクザの取材を続けているのも、最初は絵になるからと思っていたけど、みんながイヤがるからなんですよね。それでどんどんハマっていって、新聞社でさえ取れない情報を実話誌出身の俺が取ってくる。何なら優秀な記者に頭を下げられたりするワケじゃないですか。
自分は能力も低いし、ほかじゃ目立たないけど、『ヤクザといえば、鈴木智彦』と言ってくれる人がいる。それを聞くと、喜びで打ち震えるんです。ありがとうございます……! って気持ちになるんです」