芸人だけではない。徳井が活動自粛中に最終回を迎え、約15年の放送を終えた関西のローカル番組『ビーバップ!ハイヒール』(朝日放送、2020年3月26日)。世間にまだあまり名前が知られていなかったころから、チュートリアルをレギュラーに起用していた番組だ。司会のハイヒールらによると、その最終回の収録スタジオに徳井は来ていたという。しかし、テレビ画面にその姿が映ることはなかった。
番組のエンディング。チュートリアルと共に番組を支えたブラックマヨネーズやたむらけんじを前に、番組レギュラーを長く務めてきた作家の筒井康隆は言った。
「諸君を前にして甚だ悪いけど、ギャグ一番面白かったの徳井。すごいんだもん、“凄み”が」
「もう1回、諦めんな。
よし、がんばっていこう」」
チュートリアルは幼なじみで結成されたコンビだ。相方の福田充徳は、「(徳井は)女の先生のスカートの中に一番入ってましたね」と幼稚園時代を振り返り、「僕は『徳井くん』っていうタイトルの作文書いてるんですよ」と小学生のころを懐かしむ(『スタジパークからこんにちは』NHK総合、2014年6月10日)。
徳井もまた、今までの人生で一番面白かった思い出として、福田と過ごした子どものころの時間をしばしば挙げる。
そんな福田は相方の活動自粛中、1人でテレビ出演を続けてきた。相方についてあまり多くを語ることなく、ただ待ち続けてきた。
その福田が、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系、2020年7月10日)に出演したときのこと。“ステイホーム疲れ”で気が抜けた人たちの相談に福田が乗るという設定で、彼の目の前に自営業の男性が現れる。「徳永」と名乗るその男性は、「最近ダラダラし過ぎて税金を滞納しちゃいました」「明日やろう明日やろうと先延ばしにしてたら、想像を絶するルーズということに気づきました」と、相方を想起させることを言い始める。
番組を見たことがある人ならわかるように、『脱力タイムズ』はツッコミ役の芸人以外が台本に添って役回りを演じるコント仕立てのバラエティーだ。このときも福田以外はネタを演じ、それに福田が振り回されている。そんな状況下で、福田は「それはあなた、一番ダメですよ」と男性をたしなめつつ、ネタとも本音ともつかない微妙なニュアンスで少しずつ語り始めた。
「あなた今まで正直だらしなかったでしょう。中学のときから夏休みの宿題はやってこなかったですよ、あなたはいつも。でも、それを笑い話にしてずっとここまで来ました」
しかし、あなたはそのルーズさが笑い話になる場合と、しっかり守らなければならない場合の線引きを、ずっと曖昧にしてきた。その結果が、今なのではないか。そのことを、あなたは今回ようやく気づいたのではないか。反省しよう。周囲の人びとに謝罪し、感謝しよう。そして――
「これからちゃんと前向きに変わっていこうっていう気持ちをもったら、お前いけるから。な? 大丈夫やから。もう1回、諦めんな。わかったか? よし、がんばっていこう」
徳井は芸能活動を再開した。漫才の舞台に立ち、ラジオのレギュラーに復帰した。地上波のテレビ番組にも出演し、今回ようやくレギュラー番組にも戻ってきた。しかしまだ、相方とのテレビ共演は果たしていない。
「チュートリアルは世界を見せた」と小沢は言った。待ち続けた相方と作る、もしかしたらそれまでより少し奥行きを増しているかもしれない「世界」。それが見られる日を、楽しみに待ちたいと思った。
<文・飲用てれび(@inyou_te)>