両親の身体のことも心配
●三橋雄二さん(34歳・会社員=仮名)
「金銭的な理由から実家に戻ると思います」
関西でひとり暮らしをしている三橋雄二さんは元「子ども部屋おじさん」だ。
「実は家を出る予定ではなかったんです」
というのも仕事は病院の設備関係の業種。病院に出入りしており、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、同居する60代の両親への感染リスクを減らすために家を出ることを選ばざるを得なかった。
「家族とはよく話をしていたので、ひとり暮らしを始めてすぐは家の中がシーンとしていてなんだか寂しかったです」
そう苦笑する。実家では家事や料理は母親任せだったため、当初は悪戦苦闘していた。だが、今では本を見ながら料理を作ったり、ひとり暮らしを楽しんでいる。
「実家暮らしと比べると出費が大きく生活は正直厳しいです。コロナが落ち着いてきたら自宅に戻ることを考えています。ひとりで暮らしていける自信はついたし続けたいですが、お金の問題は大きいです。この生活を続けていたら貯金はできません。それに両親の身体のことも心配です」
給料の一部を実家に入れていたこともあったが両親から「貯めておけ」と言われて以後、貯金に回しているという。
三橋さんの実家にも子ども部屋おじさんを象徴する学習机やゲーム機が残っている。
「小学校3年生のとき引っ越し、自分の部屋ができたのはうれしかったですね。そこでずっとゲームをして過ごしていました」
これまでにも部屋をおしゃれにしよう、と学習机の処分を考えたこともあるが、大きくて処分できず、ズルズルとそのままになっている。
「今は生活がきついので、将来のことは考えられません」
と不安を吐露する一方で、ささやかな希望も語る。
「実家に戻ったときは思い切って模様替えをしたいですね。机はもうボロボロなので処分しようと思います」
実家という安定を得つつ、家族ともつかず離れず。そのうえで、仕事、夢に、前向きに生きる。彼らにはそんな共通点もあるのかもしれない。