テレワークの普及で“脱ハンコ”の追い風が吹き荒れている。その風は人生の節目を左右する「婚姻届」「離婚届」にも及んだ。
上川陽子法務大臣は9日の会見で「婚姻届や離婚届の押印は廃止する方向で検討している」と述べた。
現在、婚姻や離婚はそれぞれが届け出に署名し印鑑を押して役所に提出する必要がある。これらの捺印は認め印でも届け出が可能なため、法務省も「廃止することができる」という見解をみせているが、
「自分で記入して捺印まですることは心理的なプレッシャーがかかっています。これがいちばん大事。離婚を勢いで考えている人には“本当にいいのか”とハンコを押すときに冷静に考える機会を与えてくれます。その時間が取れなくなれば、離婚が増える可能性は十分あると思います」
そう話すのは、行政書士の小竹広光さん。
さらに夫婦問題カウンセラーの高橋知子さんも、
「離婚届には面倒くささが大切なんです。証人探しや記入、捺印の手間を考えると、“やめておこう”とか“気が重い”と考える人もいます。迷っている人は手続きに手間がかかれば、その間に気持ちが変わることもあるんです」
オンライン化で離婚が激増する!?
さらに脱ハンコだけではなく「オンライン化」も離婚増加に拍車をかけるという。
海外の事例によると、北欧のデンマークが’13年にオンライン離婚を導入した。すると離婚件数は増え、婚姻届を出している夫婦のおよそ半分に達し、社会問題に。
実は日本でも戸籍関係のオンライン届け出は2004年から制度上は可能だという。しかし、現時点で導入している市町村はない。
「役所の手間が削減され、業務は効率化されるでしょう。ネット環境があればどこでも提出できますから、窓口の混雑や長時間の待機は解消されるなどメリットはあります」(前出・小竹さん)
ハンコもなくなり、オンライン化された場合、離婚届を勝手に出されてしまう可能性が高まりそうだが……。
吉村和貴弁護士は、
「現状の届け出も認め印でいいので本人確認はまったくなされていない状態。ですがオンライン化が進めば、手続きには本人確認のためにマイナンバーカードなどが使われると思われます。
パスワードの記入や電子署名が導入されれば本人確認の精度は上がり、無断で提出されたり、詐欺目的などで悪用されるケースは逆に減ると思われます」