たとえ無断で出されたとしても対策はある。不受理届だ。夫婦問題研究家の岡野あつこさんが説明する。
「役所にあらかじめ出しておけば相手が勝手に離婚届を出しても受理されません。離婚する意思がない人だけでなく喧嘩後の興奮状態だったり、相手に言われるがまま書かされ、提出されてしまったときにも効果があるでしょう」
無断で離婚届を提出した場合、罪に問われる可能性も。
「『有印私文書偽造罪』などに当たります。オンラインから不正に離婚届を出せば『公正証書原本不実記載罪』や『不正アクセス禁止法』の違反で摘発される可能性も。もし虚偽の離婚届とあわせて再婚すれば『重婚罪』にも該当します」(前出・小竹さん)
「前向き離婚」も人生の選択肢に
とはいえ、手間が簡素化されるのは確実。一時の感情で離婚して、後から悔やむ人も出てくるだろう。
「離婚となれば財産や親権など話し合わなければいけないことがたくさんあります。でも、先に離婚届を出していざ話し合おうとしてもなかなか難しい。相手が応じないことも考えられます」(前出・吉村弁護士)
特に子どもの問題は重要で前出・高橋さんは危惧する。
「大人のふたりが別れるだけなら簡略な手続きでいいと思うのですが、勢いで離婚した後の子どもたちのことは非常に心配です。ハンコがなくなって、オンライン化されたとしても子どもの気持ち、将来のことはよく話し合ってほしいです」
一方で、前出・岡野さんは「前向き離婚」の可能性も示唆する。
「離婚が増えることを懸念する人もいますが、幸せを目指す離婚ならしてもいいと思います。修復不可能な状態の相手に執着し続けるより、次の相手に期待してもいいのではないでしょうか。
だからといって安易に離婚するのではなく、相手との関係を修復しようとお互い努力することが大前提。それでも無理なら早く離婚したほうがいいという話です」