子どもが同級生にいじめられ、学校には取り合ってもらえなかったどころか、PTAから「転校したら」と促されてしまったーー。PTAはなぜ学校側をかばい、いじめられた子どもを学校から排除するような働きかけをしてしまったのか? いま、学校で“本当に起きていること”。ノンフィクションライター・大塚玲子さんがお伝えします。

 

 子どもが同級生にいじめられたが、学校には取り合ってもらえず、しまいにはPTAから「転校したら」と促された――。先日、こんなショックなツイートが話題になりました。

 PTAというのはどちらかというと、「学校と保護者の間をとりもつ団体」というイメージの人が多いでしょう。それがなぜ、いじめられた子どもを学校から排除するような働きかけをしてしまったのか?

 何が起きたのか、ツイートをした女性・Rさんに、経緯を聞かせてもらいました。

校長は「いじめではない」
保護者からは「迷惑」と言われ

 Rさんの娘、A子さんがいじめられるようになったのは、いまから約4年前、小学校に入って間もないころでした。低学年のころは、持ち物をゴミ箱に捨てられたり、上履きを隠されたり。3年生になると、グループ内での無視や仲間外れも起き、靴の中に石や小枝を入れられたこともありました。

 Rさんは学校へ相談に行きましたが、校長は取り合ってくれません。暴力があったわけではないし、お金を盗られたわけでもないから「いじめ」ではない、というのです。A子さんは発達障害があり、特別支援級と普通級を行き来していたのですが、「普通級でいじめが起きるのは、発達障害があるA子さんが悪い」と、この校長は考えていたようです。

 7年前に公布された『いじめ防止対策推進法』では、「本人がいじめと感じたら、いじめである」と定義されているのですが、この校長には、法律も関係ありませんでした。

 娘さんは4年生になったころから、学校に行けなくなってしまったそう。

 RさんがPTA会長や役員さんたちから転校を促されたのは、A子さんが不登校になって半年ほど経ったときでした。

「最初はLINEで、クラス役員のお母さんとかから『学校にあれこれ言っているのが迷惑だから、ほかの生徒のことも考えてほしい。不登校なら、ほかの学校に行ったら』と言われたんです。

 その後、そのお母さんやPTA本部役員さんたちから呼ばれて話を聞きにいったら、グルッと取り囲まれて、会長さんから『あの校長は変わらないから、この学校にいてもつらい思いをするだけ。転校したほうがいい』と言われて。親切な言い方ですが、私たちを追い出そうという話だったのでショックでした」

 転校は、Rさん自身も考えてはいたことでした。ですが、転校した先の学校で同じことが起きないという保証はありません。万一また転校先でもいじめがあれば、A子さんはより深く傷ついてしまいますし、A子さん本人も「転校したくない」と言っていたので、とどまっていたのです。

 悩んだ末、結局、今年の春、娘さんが5年生に進級するときに転校したところ、新しい学校いじめもなく「結果オーライだった」ということですが、それにしても「なぜ、被害者側が転校しなければいけなかったのか」という理不尽な思いは今もある、とRさんは話します。