昔から夜が怖くてたまらなかった

原田 本のサブタイトルも『私は一人ではない』ですよね。ひとりではないと気づけたのは、やっぱり自助グループへの参加がきっかけだったんですか?

高知 うん。自助グループに参加したり、依存症から回復するためのプログラム「12ステッププログラム」を実施したりして、自分の弱さやトラウマに気づくことができた。

 実は俺、“夜”が必要以上に怖いんですよ。

原田 夜ですか?

高知 そう。俺が子どものころは、おふくろも親父も夜になると出ていって、2〜3日帰ってこないこともザラ。テーブルの上に食費は置いてあったけど、ひとりで真っ暗な家で過ごさなければならなくて、すごく怖かった。今は電気をつけたまま家を出るようにしてるけど、考えてみると暗い部屋に帰るのがイヤで飲みに行き、薬物や危険が近づいてくる……という危うい生活だったような気がする。

 昔は“暗い部屋が怖い”なんて、男らしくないし、恥ずかしくて言えなかったからね。でも今は「夜が怖い」とか「さみしい」って大声で言えるようになったし、そんな自分が大好き!

原田 わかります。ダメな部分も含めて、本当の意味で自分を好きになれたんですよね。変な話だけど、僕はスキャンダルが見つかってよかったし、高知さんは捕まってよかったのかもしれないですね。

高知 本当に捕まってよかった! 失敗を共感してもらえる原田くんにそう言ってもらえるのが、すごくうれしい。自分の犯した過ちに対して申し訳ないとは思うけど、これからの人生で罪を償っていけばいい、と思えるようになったよ。

 もしも俺みたいに、ひとりで抱え込んでいる人は、各地域にある「精神保健福祉センター」に相談したり、自助グループに参加してほしい。正しい知識を発信していくのが、俺の役割やと思う。

原田 重要なのは、失敗したその後どう行動するか、ですよね。もっと高知さんが薬物依存から立ち直った姿を世間に見せてほしい。この対談を読んで「高知さんに話を聞いてほしい」という人が相談しに来ると思いますよ!

高知 そのときは一緒にやろうよ!

原田 僕は話を聞くことしかできませんが、ぜひご一緒したいです!

高知 なんだか俺ばっかりしゃべってしまったけど、ひとつ、原田に聞きたいことがあったわ。

原田 なんですか? 

高知 なんで、もう少し前戯をちゃんとやらんの?(笑)

原田 申し訳ない。どうかしておりました……(笑)。

【本日の、反省】高知さんと久しぶりにお会いできて、すごく楽しかったです。印象的だったのは「心の防弾チョッキを脱げた」という言葉。僕らは根性論や男らしさを美徳としていた世代なので、人に弱さを見せたり、なかなか心の鎧を脱げなかったりする人が多いのですが、高知さんは「防弾チョッキを脱いだ」と口に出せる人に変われたのかも。自分のやるべきことを自ら見つけた高知さんは、とても希望にみちあふれていてステキでした!

『生き直す私は一人ではない』(青志社刊)著=高知東生 任侠の男の愛人の子として生まれ、その母は17歳のときに自殺。芸能界デビューしたものの、薬物依存になり、ついには逮捕。壮絶な人生を送ってきた著者による、“生き直し”までの自叙伝。 ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

《取材・文/大貫未来(清談社)》

原田龍二(はらだ・りゅうじ)……1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。現在、YouTubeチャンネル「原田龍二の湯〜チューブ!」を配信中!
高知東生(たかち・のぼる)…… 1964年、高知県生まれ。1993年に芸能界デビューし、俳優として『新・仁義なき戦い/謀殺』など、映画やドラマ、バラエティーで活躍。1999年に女優の高島礼子と結婚。2016年6月、覚せい剤と大麻の所持容疑で逮捕され、同年8月に離婚。現在、薬物依存の専門病院や自助グループに関わりながら依存症問題の啓蒙活動に取り組む。9月には『生き直す 私は一人ではない』(青志社)を出版。