大学3年から付き合っていた彼女がいた
ドラマの後半、ある重要な場面のリハーサル中、現場のスタッフが軽口を叩いて少し騒々しいことがあった。
「僕と靖子ちゃんが対面するシーンで、恭兵さんは黙って聞いているだけの芝居だったんですけど、恭兵さんがカメラさんに向かって“大事なシーンをやってるんだよ。気持ちが裂けるからやめてくれよ!”とビシッと言ってくれたんです。
“ああ、この人はすごいなぁ”って。同時に“ありがとうございます”という気持ちがこみ上げてきました」
かをるの腹違いの姉・律子を演じた桜田淳子には、こんな思い出が
「演技では勝ち気で突っ張っていましたけど、ふだんはすごく感じのいい方。素朴で、温かくて、スター然としていらっしゃらない。
実は中学生のころ、アイドル時代の淳子さんのファンだったので、言おうか迷ったんですけど、うっかりそのまま伝えてしまったんです(笑)。そうしたら、淳子さんに“で・し・た! 過去形ですか”って、ちょっと冷たく言われましたよ。
あれから35年たって、僕もそういうことを言われることが増えてきて、淳子さんの気持ちがわかります(笑)」
プライベートでは、実はひそかに交際していた女性がいたという。今だから話せることとして、川野が事情を語ってくれた。
「この際だから、正直に言います。大学3年から付き合っていた彼女がいました。ただ自分は器用なほうではないので、一度は“俳優の道を目指すから別れよう”と伝えたんです。そうしたら彼女が“1週間後にあらためて、もう1回会いましょう”と。
1週間後に“いま現在の気持ちはどうですか。好きですか。嫌いですか”って聞かれたので、“嫌いじゃない、好きだよ”と。“だったら無理してお付き合いをやめる、別れるって、いま決めることないんじゃない?”って彼女が言ったんです。“わかった。その代わり会えないよ。中途半端になりたくないし”と。それで、僕も演劇の研究所に専念して通うことができたんです」
『澪つくし』のオーディションに合格し撮影が始まってからは、たまに電話で話すくらいで距離が離れていったが、その後は『武蔵坊弁慶』『ザ・ハングマン』などの仕事の合間をぬって数か月に1度、会う機会があったという。
「これも今だから言えますが、ある方のお宅で……。親みたいな年齢の方で、とてもお世話になっていたんですけど、その方の家に別々に入っていっていました。写真週刊誌が全盛の時代でしたし、向こうは素人だから、変なかたちで書かれたくなかったんです」