相づちはチャップリンを参考に

 では、オンラインでは、相手の会話にどうリアクションすればいいのでしょうか。それは、声を出す相づちをやめることです。無言で、大げさにリアクションするんです。いっそのこと、相づち自体やめるのが得策に思えるかもしれませんが、相手の会話へのリアクションは必要です。話し手は、聞き手が何かしらリアクションをしてくれないと、不安でしゃべりにくくなってしまいますからね。

 そこで、声の代わりに、リアクションを大きくするんです。「うんうん」と言う代わりに大きく頷く、大声で笑う代わりに大きく笑顔をつくる……。これまでの”声の相づち”から“身体の相づち”に変えるんです。お手本になるのは、無声映画のチャールズ・チャップリンです。

 彼は声を出さなくても、大きくうなずいたり、少々大げさに思える身振り手振りや豊かな表情を駆使して、感情を伝えていました。言葉にせずともかなり正確に、むしろ、言葉以上に感情を伝えていました。普段は、チャップリンのように動いたら少々浮いてしまいますが、オンラインでは声で伝わる相づちの効果が薄くなるぶん、彼くらいの伝え方をしてちょうどいいのです。

 複数人が参加するオンライン会話では、話し方が重要になります。今年の春以降、オンライン会議が急増していますが、対面での会議とはまったく別物に感じているはずです。会社によっては、うるさくならないように、発表者以外はマイクをオフにするなど、周りの反応がわからない会議も多く存在します。オンライン飲み会でも、普段のようにみんなが同時にしゃべるのではなく、ひとりが中心になって喋って、ほかの人が聞く、というスタイルが主になっています。

 複数人との会話では、スタッフもブースにいないひとり語りのラジオ番組に近いイメージを持ちましょう。対面での会議や飲み会が、スタジオにいる人がリアクションをするテレビ番組だとすると、オンラインは、聞いた人たちの笑い声は聞こえないものの、心の中で反応するラジオ番組に近いイメージです。

 これは、前回少し触れましたが、自分で空気を作るチャンスでもあります。大勢が直接聞いている場では、笑っている人が多ければ盛り上がっている空気に、ひとりも笑っていなければスベっている空気になってしまいます。対面だと、空気の決定権は、聞いている人たちに委ねられていました。しかし、リアクションの制限されたオンラインでは、この空気の決定権が、話す側に委ねられます。