手続きは書類1枚で簡単にできる!
いざ届け出を出そうと思った場合、どのような手順が必要なのだろうか?
「姻族関係終了届という書類と、戸籍謄本、死亡した配偶者の戸籍謄本(死亡記載のあるもの)を役所に出すだけ。あとは認め印さえあれば大丈夫。非常に簡単な手続きで完了します」
届け出は、配偶者の死後であればいつ提出してもOK。提出期限もない。しかも、姻族に知られることなく、自分の意思だけで届け出を出すことができる。義家族が戸籍謄本をとって調べさえしなければ、絶縁されたことはわからない仕組みになっているのだ。
旧姓に戻るには“復氏届”という別の届け出が必要になる。子どもの戸籍や名字も自分と同じものにしたい場合は、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立書を提出し、許可が下りたら、役所に入籍届を提出する……と少々複雑になってくる。
嫁に死後離婚されないために
ここまでは嫁側の立場で死後離婚を解説してきたが、ここで姑側からの見方にも触れておこう。
「姑世代はどうしても“家”への意識が強く、お嫁さんはその一部と考えてしまいがち。嫁や子どもは家のルールに従うべき……という意識があるなら、危険信号です」
介護を100%嫁に期待するのではなく、公的サービスや民間を利用するなど、違う視点も持つようにしたい。孫の教育方針が気になったとしても昔の基準で口を挟むのもタブー。
遠慮のない態度は、家族のことを思ってのことかもしれないが、嫁側は理解できず、ふつふつと恨みをつのらせているかもしれない。
死後離婚を選択する意味
と、ここまで死後離婚について詳細に述べてきたが、中村さんいわく「義両親の介護や墓問題で死後離婚を考えている人は少なくないが、届け出を出さなくても回避することは可能」という。
「法的には、特別な事情がある場合を除いて、嫁が亡夫の親を介護したり、扶養しなければいけないという義務は一切ありません。お墓も、夫と同じ墓に入るという決まりはないので、別の墓がよければ自由に選べばいいのです」
それゆえ、死後離婚は“しがらみを断ち切る”という気持ち的な効果が大きいのではないか、と中村さん。
夫の死後、残りの人生は自分の好きに生きたい──。姻族関係終了届は、そう考える女性たちのお守りのような制度といえる。
(取材・文/樫野早苗)
《PROFILE》
中村麻美さん ◎特定行政書士。シーズ行政書士事務所代表。葬祭カウンセラーの資格を持ち、葬式や相続についてもわかりやすく解説。『死後離婚』(洋泉社)など著書多数。