野村さんが遺した“人のつながり”
お店の壁には、克也さんのユニフォームが飾られている。
「(彼が)最後に袖を通したユニフォームです。貴重なものなので額縁に入れて飾ったら、“額縁のほうが俺のユニフォームより高いんじゃないか”なんて笑ってました。亡くなってからも、ご家族がぜひここに飾ってあげてくださいと言ってくださったので、そのままにしています」
名将は、生前に数多くの言葉を残した。そのなかに「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」というものがある。
これは、“財産を遺すのは三流、仕事を遺すのは二流、立派な人を遺すものこそが一流である”という意味だ。
「うちもコロナ禍でかなり影響を受けていますけど、監督の話を聞いて通い始めてくれたお客さんがいたり、地方から足を運んでくれる方がいたり、お酒屋さんとのつながりもできたりと、本当に監督が遺してくださった“人のつながり”に支えられています」
愛弟子として知られる元プロ野球選手の古田敦也氏など、数多くの名選手を育てた克也さん。彼は球界だけでなく生前、愛したお店にも形なき“宝物”を遺していた。