菊五郎に何か起きない限り…
代替わりを考えているなら家族にも何か語っているかもしれない。12月上旬、自宅に帰ってきた富司を直撃した。
ーー菊之助さんが菊五郎を襲名するという話があるそうですが?
「……いえ、私は聞いておりません」
ーー海老蔵さんの襲名に合わせて行われると伺っています。
「菊五郎に何か起きない限りは、そのようなことはございません」
そう言い放つと、毅然として家に入っていった。
菊五郎の襲名について、歌舞伎評論家の喜熨斗勝氏にも話を聞いた。
「ひとつのシナリオとしては面白いと思います。菊五郎さんも31歳の若さで七代目菊五郎を襲名していますし、可能性はゼロではありません。菊五郎というのは格式高い名前ですから、名跡を譲るにもそれなりの格式が必要でしょう」
ハードルは高いが、歌舞伎界には前例にこだわっていられない事情がある。
「松竹は興行収益減を理由にスタッフや演者に大幅なギャラダウンをお願いしたと報じられました。確実に大きな収益を得られる“團菊ダブル襲名”の團菊祭を検討しないはずがありません。それ以上に海老蔵さんはライバルである菊之助さんと“2人で一緒に歌舞伎を盛り上げたい”という気持ちがあるんです」(前出・梨園関係者)
未曾有の災禍から歌舞伎界を守るため新しい伝統が生まれても不思議ではない。