音楽は決して不要不急のものではない

桜井賢(以下、桜井) コロナ禍になるとは思わなかったけど、なってしまったからには正面からぶつかっていかないといけない。世界中の人が今までの生活が成り立たなくなって、誰もがいろんなことを考えていると思う。

 そういう今こそ、自分の中に切り札を探さないといけないときじゃないか切り札がない人もいるけど、多くの人はそこを考えて乗り越えるために日夜、努力していると思う

 今の状況を逆手にとって、自分にとっての切り札を見つけていくことも必要なんじゃないか。日本中を回ってライブをみんなと一緒に楽しむことが、まったくできない世の中になってしまった。そこをどう乗り越えていくのか。できることを模索し、考えていくことだと思います。

──模索してできたのが、8月に行った初めての配信ライブ。その感想は?

高見沢 夏のイベントは、ずっとやってきた。今の時代だから配信を使ってできることはありがたいけど、実際にやってみると観客のパワーというのにかなり助けられてきたと感じましたね。

 これまでは派手で重量感のあるギターの重さを感じたことはないけれど、無観客ライブで初めてギターが重いなと感じました。コンサートは(観客との)キャッチボールなので、それができない配信ライブは何回もできるものではないと思いましたね。

 そして、音楽は決して不要不急のものではないと改めて感じました。最初に言われたときは、ちょっと落ち込みましたけど、やってみてそんなことはないと身をもって感じました

坂崎 お客さんがいるといないでは疲労の質が違いましたテレビ収録で20数曲やっているような感じ。(収録は観客の)反応がないから1曲でも疲れるし、どこがいいのかもわからない。(ライブは)お客さんが喜んでくれれば、僕らも多少ミスったとしても、お互いのキャッチボールだから声援や拍手があると伝わったなと思える。

高見沢 あとMC。しゃべってもウケているのか、いないのかというのがない。MCは僕らにとって重要なひとつなので、そこも苦労しましたね。

坂崎 ツアーだと30公演ぐらいやって、セットリスト(曲目)は基本的には変わらない。それを無観客で30本やれといわれたら、絶対にできないね。前日と同じセットリストでも、お客さんがいるから全然違う気持ちでできる。

坂崎幸之助 撮影/伊藤和幸
坂崎幸之助 撮影/伊藤和幸

高見沢 配信ライブは何回もできませんね。

桜井 今まで2800本近くコンサートを続けてこられたのもお客さんにパワーをいただいたから。もうひとつは(コロナ禍で)生活がガラッと変わった。リハーサルを10日ぐらいして、本番を半年重ねてきて、夏のイベントをやるというリズムがあった。ツアーをやりながら自分の身体やのどを鍛えている。

 野球選手と同じで試合勘がないとダメそれと似ているところがあって(ライブが)まったくないのは結構つらいライブを続けているから歌に自信も出てくる

 本番は練習の何倍も力を使い、その積み重ねでライブの声になれる。配信はあくまで単発。本番をやることが自分たちにとってどれだけ大切かを健康面含めてすごく感じていますね。