「町長は自分に都合よく決めつける」
2つめのポイントは、「事件当日に録音したとされる音声データ」の存在。新井氏が今年10月、自身のフェイスブックに投稿した音声データこそが「当日のやり取りを新井氏が隠しどりしていたものだ」(町長)という。
町長はこう続ける。
「録音されているのはたしかに新井氏と私の声です。やり取りを文字起こしすると、電子書籍での事件当日のくだりとほぼ同じ内容。このあと私が新井氏に迫ったことになっている。つまり、私に襲われている場面も録音されているはずなんです。そこで“録音テープの続きを出しなさい”と新井氏に要求したところ、しらばっくれて出そうとしない。私がほかの議員を批判するくだりが録音されているため公開して人格攻撃に使いたかったようですが、当日何もなかった証拠を新井氏が持っていることを明かしてしまった。完全に墓穴を掘ったんです」
物的証拠になり得る音声データの存在もまた大きい。新井氏に事実関係を確認すると、呆れたような表情でこう答える。
「あれは事件当日の録音データではありません。町長はいつも同じ話をするので似たような会話になっているだけ。何度もこの話を繰り返しているんです。町長はすぐ自分に都合のいいように決めつけますが、実際は事件があったあとの録音です。隠しどりした理由ですか? 自分の身を守るためです」
と、またもや両者の言い分は真っ向から対立する。
刑事事件の捜査と、民事裁判の進展が待たれる中、町長はこう憤る。
「新井氏は何ひとつ証拠を出さず、議会で不審な点について説明を求めても“裁判で明らかにします”と逃げてばかり。立証責任のない私のほうが真相解明に積極的だ。被害が事実というならば、新井氏は強制性交等罪で私を刑事告発すればより重罪で罰することができるのにそうしようともしない」
「公費を870万円もかけるなんて」
ほかにも町長は、民事裁判を審理する前橋地裁に対し、新井氏の議員報酬を仮差し押さえるよう申し立てた。つくり話による損害賠償が認められたときに備え、新井氏が「払えない」とならないよう1000万円分の差し押さえを求めたところ、裁判所は今年10月に200万円について認めたのである。
新井氏は、
「もう失職したので議員報酬はなくなりますが、直前の2か月も報酬の振り込みはゼロでした。議員活動や町政の問題点などを町民に紹介する私の広報誌『しょこたん通信』の印刷費や新聞折り込み代金が払えなくなったのが困りましたね。外食を控えてコンビニのおにぎりで済ますなど切り詰めた生活でどうにかしのいできました」
と言えなかった苦労を明かす。
また、同町は今年10月、新井氏が住民基本台帳に不実記載をしていたとして前橋地検に告発状を提出している。届け出ている住所地に住んでいないというのだ。
新井氏にこの点を尋ねると、
「居住実態がないかのように疑われていますが、そんなことはありません。過去の議員落選中に朝早くから夜遅くまで仕事で草津にいなかったため周辺住民とあまり顔を合わせなかっただけです」
と反論。
さらに、「もしリコールが成立しなかった場合は『不実記載』をデッチあげて私を落とすつもりだったのではないか。何がなんでも辞めさせたかったんでしょう」とした上でこう付け加える。
「そもそもコロナ禍で公費を870万円もかけて私のリコール投票をすることがまず信じられません。町中に私のリコールを求めるポスターを600枚も貼り、観光客は草津に着いた途端それを目にして“何コレ”って驚いていました。これが町民や町のための政治といえるでしょうか」