『プラダを着た悪魔』ではメリル・ストリープ演じるファッション雑誌のカリスマ編集長がジャーナリスト志望の主人公(アン・ハサウェイ)をアシスタントとしてこき使っていたが、今回のドラマではさしずめ菜々緒がストリープで、上白石萌音がハサウェイというところだ。
アシスタントが傲慢な編集長に反発するものの、編集長は単に意地悪なわけでなくそれなりの意図があるという点も似ている。
それだけでなく、お笑い芸人のなだぎ武が副編集長の半田を演じているのだが、それも『プラダを着た悪魔』でいい味を出していた編集者ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)を連想させるキャラ。
細かい設定でも、編集長が出社時に飲むコーヒーを毎朝、アシスタントがカフェでテイクアウトして来ること、アシスタントがファッションにこだわりのない人でださめのニットを着ていることなど、映画そのままの描写が目につく。
「金の亡者」になってしまった編集長
もちろん違う要素もある。『プラダを着た悪魔』では舞台がアナ・ウィンター率いるヴォーグ誌のような既に世界的に知られるモード誌『ランウェイ』であるのに対し、『オー!マイ・ボス!』の舞台は新しく創刊される雑誌の編集部だ。ストリープ演じるミランダは、私生活では夫と双子の娘がいるが、麗子は独身。
何より主人公の設定が違う。映画の主人公アンドレア(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望でキャリア志向だが、奈未は事務職志望でそれも結婚するまでの腰掛けのつもりだった。
そして麗子が、奈未の好きになった御曹司・潤之介(玉森裕太)の姉であること。映画ではエミリー・ブラントが演じた同僚の編集アシスタントが、ドラマでは久保田紗友演じる遥で今のところ奈未とは友好的であることなどだ。
しかし、『オー!マイ・ボス!』が『プラダを着た悪魔』へのオマージュなら、最も残念な相違点は、映画ではファッションという文化を敬愛し、モードの最先端にいるという自覚とプライドを持っていた編集長が、ドラマでは広告料のためなら土下座もする金の亡者になっていること。
副編集長の半田が「彼女が笑う時、それはお金が動く時」と説明したように、麗子の目的は雑誌に入ってくる広告料金にある。