奈未が「ファッションって人に夢を与える仕事なんですね」と言ったのに、「夢なんかではない」と否定し、5000万円の広告料のために嘘をついたと語る麗子。
第2話でも、彼女が奈未に命じて人気漫画家を口説き落とし、イラストを描いてもらえることになるが、それもカルティエのマーケティング部長がその漫画家のファンだったからというオチ。
その作戦で麗子は6000万円の表4広告を獲得した。そんな描写が続くので、ハイブランドの服に身を包んだ麗子が「結果を出さない人間はいらない」「人並みの根性もない」と叱咤する言葉も、まるで営業ノルマを課す上司のように、世知辛く聞こえてしまうのだ。
テレビ局はなぜ「漫画原作」を求めるのか?
そもそも、人気漫画のドラマ化はテレビ局にとってメリットだらけ。まず、ほとんどの原作が10万部、100万部と売れた作品であり、それだけの数の読者がいるという知名度は大きい。
原作を見せれば内容が事前にわかるので、キャスティングやスポンサー営業の際もやりやすく、ダイレクトに原作漫画の版元や電子コミック配信サービスからのCM出稿も見込める。
その手堅さゆえ、一時は漫画原作でなければドラマの企画が通らないと言われたぐらいで、若手プロデューサーがオリジナルの企画を提案しても、編成部などから「原作なしで視聴率10%を取れるのか」とダメ出しをされたり言質を取られたりするという話も聞いていた。
それゆえに、テレビオリジナルの企画が増え、ドラマの作り手が創造性をフルに発揮できるようになるならば、その流れは歓迎すべきところ。
実際に2020年は『MIU404』(TBS系、野木亜紀子脚本)、『知らなくていいコト』(日本テレビ系、大石静脚本)など、世界観を作り込んだクオリティの高いオリジナル作品で、話題にもなり最高視聴率が10%を超えたものもあった。
しかし、火曜ドラマのオリジナル3作は、もしこれらが人気コミック雑誌の連載企画だったら、プロット(あらすじ)を出した時点で通らないのではないかと思われるほど、作り込みが甘いように見える。その結果、視聴者の熱狂を呼べず、平均視聴率も低下しているのではないか。