追いかけるのは忘れられない元カノ

「理由もなく、人と離れることが僕は悪いと思っているんです。考え方が違っても、すり合わせの機会ぐらいないと世の中、成り立たない」

 そう持論を展開するのは会社員の北澤サトシさん(仮名・40代)。彼は交際相手に執着する傾向がある、元ストーカー加害者だ。

 きっかけは高校時代の彼女Bさんとの交際だった。

 サトシさんはBさんにだけ打ち明けた秘密があった。小学校から高校まで、性暴力を伴ういじめを受けていたことだ。彼女なら「受け止めてくれる」と期待していたが、「私には重すぎる」と言われ、関係がギクシャクした。

 高校を卒業しサトシさんが専門学校に進学したころBさんから「お互い違う学校へ行くようになった。将来のために勉強に集中したい」という別れの手紙が届いた。しかしサトシさんは復縁を迫った。

「話したかったんです。何度も電話をかけ、家にも行った。駅で待ち伏せもしました。彼女に負担をかけたので、謝ろうとした。別れたくない。話せばわかると思っていました」(サトシさん、以下同)

 だが、数か月後、警察に通報された。当時は「ストーカー行為等の規制に関する法律」がない時代。今では考えにくいが口頭で注意されたのち、警察官立ち会いで、話すことができた。だが、Bさんは黙ったままだった。

「頭では嫌われているとわかっていたんですが、会って、顔を見て、わかりました」

 以後、Bさんに直接アプローチすることはなくなったが、「わかってくれなければ死のう」と自殺未遂をした。

自暴自棄になり、路上で痴漢行為を繰り返す

 さらに自暴自棄で路上で痴漢行為までも繰り返した。

「夜中に若い女性を狙って痴漢を繰り返しました。僕をいじめていた加害者は誰も罰を受けていない。だから自分も捕まるとは思っていませんでした。痴漢をすると、被害者は驚いて悲鳴を上げました。性的興奮がないわけではないですが、いじめを受けた僕の気持ちを思い知らせることができ、目的は達成しました

 自分勝手な理由で女性の尊厳を踏みにじる卑劣な行為。

 その後、痴漢行為について警察が知るところになる。罪の意識はなく、自ら話したことで加害が特定。ケガをした被害者もおり、強制わいせつ致傷で逮捕された。有罪となり、6年の実刑を受けた。

「当時は自分のいじめ被害のことを考えたり、『Bさんがわかってくれさえすれば救われたのに』と思ってました」