50代の10人に1人の女性が悩む便失禁
無意識、または自分の意思に反して、肛門から便が漏れる症状を“便失禁”という。実はコレ、単なる老化現象ではなく、立派な病気のひとつなのだ。
「加齢に加えて、排便をコントロールする機能にトラブルが起きることで起こる病気です。症状が重ければ治療が必須です」(前田先生、以下同)
便漏れに悩む人は多く、前田先生の研究データでは、50代女性の約12%、つまり10人に1人以上に便失禁があるという。
「多くの人が悩んでいるにもかかわらず、便漏れは恥ずかしいという意識から、誰にも言えず思い悩む人が少なくありません。ひとりでこっそりと下着を洗ったり、外出ができず家に閉じこもったり。生活の質を大きく下げ、うつ状態になる人もいます」
【便やおなら漏れ、高齢者だけの症状ではなかった!!】
・20代 便漏れ2.5% ガス漏れ23%
・30代 便漏れ6.1% ガス漏れ31%
・40代 便漏れ6.3% ガス漏れ43%
・50代 便漏れ12% ガス漏れ57%
*450人の女性(平均年齢31歳)を対象としたアンケート結果(前田耕太郎先生の研究データより)。年齢が上がるにしたがい割合が増えていくが、なんと20代で便漏れの症状がある人も。加えて20代の約4人に1人はおならが漏れているという衝撃事実!
出産経験がある人は漏らしやすい!?
排便のコントロールには筋肉と神経がかかわっている。便意を感じて排便をするときは、まず脳が「トイレに行きたい」という指令を出す。トイレでいきむと腹圧がかかり、肛門の内側にある内肛門括約筋が開くことで排便ができる。逆に便意を我慢するときは、肛門の外側にある外肛門括約筋が肛門をしめて、排便をコントロールしている。
「脳の指令を伝達する神経や、排便に関する筋肉のいずれかにダメージがあると便失禁が起こります」
便失禁には大きく2つのタイプがあり、自分でも気づかずに漏れてしまうのは“漏出性便失禁”といい、主に神経や内肛門括約筋に問題があると起きてしまう。もうひとつは“切迫性便失禁”といい、トイレに行くまでに間に合わずに漏れてしまうタイプ。こちらは主に神経と外肛門括約筋のトラブルが原因となる。また2つのタイプがまじった“混合性便失禁”というタイプもある。
「加齢による神経や筋肉の衰えのほか、糖尿病による神経障害や、腸の手術をした人、骨盤臓器脱、神経系の病気なども原因になります。加えて注意したいのが、出産経験のある女性。会陰切開や長時間のいきみにより、肛門括約筋が損傷していることがあるからです」
自然分娩による出産時に肛門括約筋などに受けたダメージが、出産から何年もたってから加齢により発生することが多い。
年齢を重ねるにしたがいダメージが顕在化し、便失禁となってあらわれることがあるのだ。