オンライン診療の5大リスク
医療に対する信頼は担保できるのか? 注意すべき不安材料や懸念点を解説します。
【誤診】診断材料が少なく病気の見落としも
オンライン診療と対面診療の大きな差は、判断材料になる情報の量と質にある。
「対面の場合、医師は本人の症状の訴え以外にも、病気を診断するための情報を多方面から得ています」
診察室のイスから立ち上がるときの動作はもちろん、ニオイや呼気の様子など、医師は五感を使って患者を観察し診断材料にしているが、オンラインだと本人からの説明だけで判断しなればならない。
「例えば、顔にできものや腫れなどが見られる場合、対面なら“念のため全身を”と、その場で背中やお腹などをすぐに確認でき、触診や組織をとって調べることも可能ですが、オンライン診療だと“服を脱いで全身を”ということすら対面に比べて行いづらい。情報が少ない分、診断ミスや病気を見落とす可能性はあります」
【重篤化】診察のタイミングが遅れて命の危険に!
オンライン診療の予約を待つ間に、症状が進行してしまう心配はないのだろうか。
「じんましんなど罹患(りかん)したことがある病気なら、“少し時間があいても大丈夫”と思いがちですが、自己判断は禁物。気管支にじんましんが出ると、呼吸困難に陥ることもあります。新型コロナウイルスでも、自宅療養者の急変が報道されたりしていますよね。病状に異変を感じたら、すぐに近くの病院を受診するか、救急車を呼ぶべきです」
糖尿病などで状態が長年安定していても、食事の量などが影響し低血糖で意識障害が起きることも。慢性疾患で薬の処方だけだからと、油断するのは禁物!
【ニセ医師】医師の本人確認は法整備されていない
現状ではオンライン診療時に、医師の資格および本人確認を求める規定はなし。日本医師会は、顔写真が貼付してある「HPKIカード(医師資格証)」をオンライン診療時に提示することを提案しているが、ルール化されていないので気がかりだ。
「“なりすまし医師”の報告はまだありませんが、かかりつけの医師が多忙で対応できず、代わりに研修医が診察する可能性はあると思います。知らない先生が画面に現れた場合は、何を専門にしているか、病気の既往歴を理解しているかなど確認しましょう。フルネームを聞いておけば、診察後にインターネットで情報検索もできます」
初診の場合は、オンライン診療の前に、医師の名前と顔写真をクリニックのホームページで確認することを忘れずに。
【加算料金】対面診療にはないシステム利用料がとられる
対面もオンラインも保険適用内の診療であれば医療費は同額。しかし、オンライン診療には、「予約料」、「システム利用料」などとして、病院が数百円~千円前後、徴収することが認められている。問題は、料金設定が病院にゆだねられていることだ。
「サービス料的な感覚だと思いますが、制度として金額が設定されていないので、病院によって差があります。加算料金をとっていない病院もあるので、納得して受診するためにも、事前に確認しましょう」
【プライバシーの侵害】家族に知られたくない受診がバレる
「家族で同じパソコンやタブレットを使っている場合、履歴やアプリの存在で、秘密にしておきたかった受診が知られてしまうことはあると思います。個人のスマートフォンを使えばリスクは減らせますが、自宅でオンライン診療を受ける際は、ひとりのときを選ぶなどの対策も必要ですね」
心療内科の受診やアフターピルの処方、薄毛の治療など、病院からの郵便物で知られるのが心配な場合は、“わからないように送ってください”と伝えれば、病院名を出さずに送付してもらえる場合もある。