普通に生活を送るためには早期発見がカギ
がんなどもそうだが、「深刻な病気かも……」と思うと、真実を知るのが怖くて、つい受診をためらってしまう人も多い。
「パーキンソン病の症状のレベルは1から5まであって、いちばん軽い1、2のあたりで治療をスタートすれば、最初の数年は普通に過ごせます。私が担当する患者さんでも、会社の同僚や家族にさえも気づかれずに何年も過ごしている方がいらっしゃいますよ。
ただ、歩くのに介助が必要な段階になってしまってからの治療スタートですと、そこまで劇的には改善しません。“おかしいな”と思ったら、早めに脳神経内科で受診し、治療をスタートすることをおすすめします」
【パーキンソン病の重症度】
(ホーン・ヤールの重症度分類)
【1度】片側のふるえやこわばり
身体の片側だけに手足のふるえや筋肉のこわばりがみられる。身体の障害はないか、あっても軽い。
【2度】両側のふるえやこわばり
両方の手足のふるえ、両側の筋肉のこわばりなどがみられる。日常の生活や仕事がやや不便になる。
【3度】手足が動かしにくい
小刻みに歩く、すくみ足がみられる、方向転換のとき転びやすくなるなど、日常生活に支障が出るが、介助なしに過ごせる。職種によっては仕事を続けられる。
【4度】歩行が難しくなる
立ち上がる、歩くなどが難しくなる。生活のさまざまな場面で、介助が必要になってくる。
【5度】身体がほぼ動かない
車イスが必要になる。ベッドで寝ていることが多くなる。
(※武田篤(柏原健一ほか編) 『みんなで学ぶパーキンソン病』より)
達成感、幸福感でドーパミンを増やす
パーキンソン病と診断されると、薬を飲むという形で治療がスタートする。
「それと並行してしっかりリハビリをすると、その後の経過がいいというデータが多く出てきています。医師や理学療法士の指導のもと、リハビリを頑張りましょう」
ただし、いつまでも“薬が効く”とは限らない。
「発症して3年~10年は薬がよく効きますが、その後は薬が効く時間が徐々に短くなっていきます。突然、薬の効果が切れて、身体が動かなくなったりすることも……」
ドーパミンの治療が長期になると、薬が効く時間が短くなり動けなくなったり(ウエアリングオフ)、薬のせいで勝手に手足が動いてしまうジスキネジアなど運動合併症が起きるようになるという。
突然トイレで動けなくなったまま、家族に発見されるまで1日かかり、脱水を起こしてしまって救急搬送されるようなケースも。
「そういった事態を防ぐため、服薬と並行して、デバイス(装置)を身体に取りつける治療法をおすすめすることがあります。症状が悪化してからではなく早めに始めたほうが、結果的にその後、長くよい状態で過ごせます」
薬、リハビリ、デバイス治療のほかに、病気の進行を少しでも遅らせるような生活の工夫はあるのだろうか。
「積極的な気持ちを持って生活している患者さんは、進行が遅い印象ですね」
パーキンソン病は遺伝性もほぼなく、原因がはっきりしていないため、確実な予防法・治療法はない。ただ、ドーパミンの減少を防ぐような生活習慣を心がけると症状の進行を遅くできる可能性がある。
例えば、運動をしたり、好きなことに打ち込んだり、何かを成し遂げたりすると、幸福感が得られ、やる気を高める物質であるドーパミンの分泌が増えるといわれている。好きなこと、やりがいのあることに打ち込みながら病気と闘い、よりよい治療法が生まれる日を待ちたいところ!