「一般企業で言えば、代表取締役や会長職を解任する場合、株主総会や取締役会を開いて解任案を提出し、多数決で過半数をとれば可決されます。ただし、会長解任となれば企業を揺るがしかねない大事件。例えば『日産自動車』前会長のカルロス・ゴーン被告のような“重大な背任行為”に当たる理由が求められます」(経営コンサルタント)
社会派ドラマでもはしばしば描かれる“解任劇”。森会長が大好きなラグビーを例にすると、2019年放送の『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)では、「日本蹴球協会」で絶対的な権力を振るっていた会長が、ラグビー界の改革を進めたい専務理事に反旗を翻され、理事会で「会長職の解任」を提案される。すると不満を抱えていた理事らが賛同し、賛成多数の可決により会長職を解かれたのだ。
ちなみに同年4月、実際の「公益財団法人日本ラグビー協会」の定例理事会で同協会の名誉会長を辞任していた森会長。一部報道では「組織の若返りを図って」との退任理由で潔さを見せていたのだが……。
ドラマとは少々違う「解任劇」
ラグビー協会と同様に、「公益財団法人」である東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会。「理事職を失するには辞任か解任のいずれかの方法によります」とは、『汐留パートナーズ司法書士法人』の代表司法書士・石川宗徳氏。実際の“解任劇”は一般企業やドラマでのあり方とは少々異なるようで。
「まずは理事会を開催して“解任に関する議案を評議員に諮(はか)ること”を決議した後、評議員による評議委員会で再び解任の決議をとる流れになります。厳密には理事会ですぐに解任を決めるのではなく、評議会での決議を伺うための意思決定をすることになります」
公益財団法人では、理事会の他に監事1名以上、評議員3名以上、また会計監査人を設置する義務がある。この評議員が「解任案」を決議するとその場で“職”が解かれ、当人はこれを拒否することはできないようだ。とはいえ、何でも解任できるわけではなく、財団法人に関する法律で、
1.職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき
2.心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき
と定められている。森会長はこれらに該当しているといえるのだろうか。
「義務というところで、“会長職として義務を果たしていない”と判断されることはあるかもしれません。今回の女性蔑視に関する事案が会長職として、あるいは“当法人の理事としてふさわしくない”と判断された場合は解任もありうる話だと思います。解任は手順が多いですから、辞任の方がスムーズではありますね」(石川氏)
では、辞任を“拒否”し続ける森会長が解任される動きはあるのか。
公益財団法人東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会・広報局広報部戦略広報課に聞くと、森会長の案件で問い合わせが殺到しているのか「質問はメールで対応」とのこと。「会長職を解任できるのか」その際には「どのような手順を踏むのか」などの質問を送ると、メールで回答が寄せられた。
以下が、組織委員会の答えだったーー。